金正恩氏の「美人妻利権」に平壌市民の怨嗟うず巻く

北朝鮮の金正恩党委員長は昨年、路面電車とトロリーバスの車両を製造する工場を視察した。新型車両に試乗し乗り心地を評価すると同時に、このような真情を吐露している。

「わが人民が古びた大衆交通手段に不便を感じる一方で、通りにタクシーがますます増えるのを見るたびに心が重かったが、今や展望が明るくなった、本当に満足だ」

しかし実際のところ、平壌市内を走るタクシーの裏には金正恩氏の「美人妻利権」が隠れていると言われる。

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島根県の朝鮮総連系の建設資材販売会社が1992年、朝鮮合弁総局と合弁で設立した光雲合作会社が始めた北朝鮮のタクシー事業。現在、平壌市内を走るタクシーの正確な台数は不明だが、数千台規模と言われている。

最大手の大同江旅客運輸事業所を始め、6〜7社が営業しているが、その中のあるタクシー会社が庶民の怨嗟の的となっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

平壌の情報筋によると、それは人民保安省(警察庁)所属のタクシー会社だ。社名には触れていないが、元々は張成沢(チャン・ソンテク)元国防副院長の姪の夫で、元俳優のチェ・ウンチョル氏が経営する対外奉仕総局傘下の会社で、市内のタクシー事業を独占していたと伝えられている。ところが、張成沢氏は2013年12月に処刑され、チェ氏も粛清された。

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タクシー会社は労働党に移管されたと言われていたが、情報筋によると現在は人民保安省の所属となっている。そして、このタクシー会社の裏にいると平壌市民の間で噂されているのが、金正恩氏の美貌の妻、李雪主(リ・ソルチュ)氏の側近なのだ。そのことで同社のタクシーは「李雪主タクシー」と呼ばれるようになったという。

別の情報筋によると、平壌市民の間では「金正恩氏は党と軍と、(妹の)金与正(キム・ヨジョン)氏は国家保衛省(秘密警察)を、李雪主氏は人民保安省を掌握したという噂が出回っている」とのことだ。

情報筋は、このタクシーについてこんな話を伝えた。

「朝夕のラッシュアワーが過ぎると停電になることが多い。路面電車やトロリーバスの停留所の周辺には、約束していたかのように特定のタクシーが現れる」

公共交通手段が停電で運転見合わせになれば、市民はタクシーを使わざるを得ないが、それを狙ってタクシーがやってくる。つまり、停電も国の指示ではないかと疑っているということだ。地方政府は、タクシードライバーからの上納金で潤っていることを考えると、あながち的外れの噂とも言えないだろう。

タクシーの急増に伴い、苦境に立たされているのは「特流栄誉軍人」と呼ばれる人々だ。兵役中に事故などで手足を失い働くのが困難な傷痍軍人のことを指すが、金正日総書記は生前、彼らの生活保障のために、「トントンタクシー」の営業許可を特別に与えた。

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オートバイを改造し、後ろに荷台をつけたもので、乗客は8人、荷物なら1トンまで載せられるもので、庶民向けの乗り物だ。初乗り2ドル(約220円)の一般タクシーの半分の料金で、より多くの人が乗れるため、市民の間で人気が高い。

平壌市民の目には、父金正日氏の配慮で生計を立ててきた特流栄誉軍人が、息子の妻により暮らしを脅かされているという図式に映っているのだろう。「タクシーの増加で心が重い」という金正恩氏の言葉は、そんな庶民感情を読み取ってのことなのだろうか。

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