河野太郎外相は2月中旬、ポンペオ米国務長官と会談し、同月下旬に予定される米朝首脳再会談での対処方針を擦り合わせるのだという。また共同通信によれば、河野氏とポンペオ氏は21日の電話協議で、北朝鮮の非核化へ向けて日米、日米韓で緊密に連携する方針を確認。北朝鮮による日本人拉致問題の早期解決への協力も改めて申し合わせたそうだ。
このような朝鮮半島情勢と日本の立ち位置について、このような表面的なニュースばかりに触れるのもそろそろ空しくなってきた。対北朝鮮で、日米韓の「緊密な連携」などすでに存在しない。
(参考記事:日米の「韓国パッシング」は予想どおりの展開)日米の2国間では、打ち合わせぐらいは密にやっているかもしれないが、日韓がそんな状況じゃないことは言うまでもない。
日本人拉致問題の早期解決においても、米国はもはやあてにならない。米国の最大の関心事は、自国の安全保障だ。北朝鮮が、自国に届く大陸間弾道ミサイルを完成させそうになったから対話に乗り出したのである。トランプ政権は、北朝鮮が非核化を実行すれば、対価を与えると言明している。対価の条件が、「非核化と日本人拉致問題の解決」であるとは一言も言っていない。
前回の米朝首脳会談でもそうだったが、トランプ大統領は今回もまた「日本とよく話し合ってみたらどうだ!?」と金正恩党委員長に促すかもしれない。しかし、期待できそうなのはそこまでだ。日本人拉致問題を本当に解決したいなら、日本は自力で道を切り開くしかないのだ。もし、それをするための計画がまだないのだとしたら、安倍政権は拉致問題を解決するための外交戦略を持っていないということになる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面ならば、拉致問題解決のために北朝鮮を動かすには、どのような方法があるのか。ひとつは、国交正常化交渉を開始することだ。しかし、これは北朝鮮の非核化にある程度の目途がつくまでは、条件が整わないだろう。
それに、国交正常化交渉では当然、日本がどのように過去清算を行うかが焦点にならざるを得ないだろうが、安倍晋三首相がそれを積極的にやりたがるとはどうしても思えない。国交正常化交渉で拉致問題を扱う可能性が出てきたとしても、結局はうまく行かないように思える。
仮に、日本が核問題や過去清算から拉致問題を切り離し、先行して解決することを望むなら、人権問題で北朝鮮に攻勢をかけるしかないと筆者は考える。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面米韓は北朝鮮との対話を優先し、金正恩氏が最も嫌う人権攻勢を手控えている。人権こそは、金正恩体制の根幹に触れる問題だ。たとえ米国との対話が思うように進まなくとも、国際社会からの人権攻勢が弱まるならば、北朝鮮にとっては大きな利益なのだ。
日本はこれを逆手に取って、今なお北朝鮮国内で現在進行形の残酷な人権侵害の数々を暴き、「こんな非人道的な国家とは安易に対話を進めるべきではない」という国際世論を作り出すべきなのだ。そうすれば、北朝鮮も米韓も日本を黙らせるために、何らかの「対価」を差し出さざるを得なくなる。
金正恩氏はすでに、対話路線に大きく踏み出しており、日本が少しぐらい米朝対話の邪魔をしたからと言って、そう簡単に核武装の強化に舵を切ることはできない。それに何より、日本人拉致問題を解決するだけでなく、人権侵害に苦しむ多くの北朝鮮国民を救う結果につながるかもしれない。対北朝鮮の人権攻勢にかかる費用も、ミサイル防衛システムやステルス戦闘機の導入費用に比べれば微々たるものだ。やってみて、損はないと思うのだが。