「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態

中国との国境に面した地域にある、北朝鮮の教化所(刑務所)で、受刑者が看守の保安員(警察官)を殺害する事件が起きたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

事件が起きたのは、咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)にある全巨里(チョンゴリ)教化所だ。内部情報筋によると、事件のきっかけとなったのは「酒」だ。

「正月に贈り物として酒が配られた。それを飲んで酔っ払った教化生(受刑者)が、普段から自分をいじめていた保安員の頭を石で殴って殺害した」(情報筋)

この受刑者は、保安員の制服に着替えて、教化所の正門から堂々と出て脱走した。

当局は即刻逮捕命令を下し、咸鏡北道の保安部(警察本部)、保衛部(秘密警察)、国境警備隊が合同で逮捕作戦を繰り広げた。この受刑者がどこを目指していたかは不明だが、教化所から中国との国境までは30キロほどなので、脱北を試みようとしたと見るのが自然と言えよう。あるいは強化された国境警備に阻まれ、より警備の手薄なところを探していたのかもしれない。見つかったのは会寧から北東に100キロ以上離れた慶源(キョンウォン)だった。

受刑者は脱走から5日目の今月6日に逮捕、連行された。そして、10日に他の受刑者が見守る中で銃殺刑に処せられた。

北朝鮮は、国際社会から人権問題への批判を意識してか、かつては公開で行っていた処刑を非公開で行う傾向にある。ただ、今回は閉鎖された教化所という空間で、内部の秩序を保つ目的で見せしめとして公開処刑されたものと思われる。

世界最悪の人権侵害国家と呼ばれる北朝鮮の中でも、さらにひどい人権侵害が行われているのが収監施設だ。全巨里教化所の内部の実態については、収容された経験を持つ多くの脱北者が証言している。

「27歳(の男性受刑者)が部屋で夜に2人を斧で殴り殺しました。その罪で公開裁判を受けて3ヶ月後に銃殺されました。女も男もみんな集められたところで。彼は班長を務めていたが、その班の男性が先生(看守)に『班長が穀物を盗んで牢屋に持ってきた、10キロになる』と告げ口したんです。他の人にも嫌われていました。どういうわけか牢屋に斧が持ち込まれ、トイレから出たところを見かけて手元にあった斧で3回殴って殺したそうです。隣りにいた人が驚いて起き上がったのでその人も殺したそうです(中略)教化生(受刑者)が集まったところで『殺すのに賛成のやつは手を上げろ』と言われて。全員賛成するしかなかったんです」

「公開銃殺を見せられました。1人が3発撃つんです。遺体を見せられるんです。裁判に引き立てられてきたときはきちんとしていたのに、処刑された遺体は半分がなくなっていました」

(韓国の北韓人権情報センターの証言集より)

今回の事件は、人権侵害を末端で実行している保安員とて安全とは言えないことを示している。彼らが恨みを買って殺される事件は度々起きている。例えば2012年の12月ごろ、全国各地で「オパシ」(悪徳保安官)が次々に殺害される事件が起きた。抑圧体制は支配する側にとっても不幸なものなのだ。

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