北朝鮮の首都・平壌の大城(テソン)区域に位置する「黎明(リョミョン)通り」のタワーマンション群は、同国最大のランドマークと言える。高さの面で言えば、日本のどのタワマンをもしのいでいるのだ。
その一方、建築の「質」については、様々な噂がある。ただでさえ経済制裁で苦しい中、2017年の完工まで、工事期間がわずか1年しかなかったのだから無理もない。
(参考記事:「手足が散乱」の修羅場で金正恩氏が驚きの行動…北朝鮮「マンション崩壊」事故)そしてやはりと言うべきか、最近になって重大な欠陥が見つかり、極秘裏に補強工事が行われていると韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)が伝えている。
LKPによれば、北朝鮮の黎明通りの建設を短期間に終えることが出来た理由として、独自開発した混合剤の効果を強調しているという。「この混合剤を使えば、氷点下15℃の酷寒の中でもセメントが速やかに乾燥する」というのだ。
ところが黎明通りのタワマンで昨年、この混合剤を使用した柱が膨張し、また地下で地盤沈下が起きていることが確認されたとのことだ。これについて、北朝鮮国内の消息筋はLKPに対し、「科学的な検証が足りない混合剤を使用したうえ、基礎工事も不十分だったようだ」と語っている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面柱と基礎の重大な欠陥が同時に見つかるとは、まさに倒壊につながりかねない危機と言って差し支えないだろう。実際、平壌では2014年、完成したばかりのマンションが崩壊して500人が犠牲になる大惨事があった。北朝鮮当局は従来、こうした事故を徹底して隠ぺいするが、このときは犠牲者の多くが朝鮮労働党中央委員会の職員家族だったこともあって、やむをえず公表している。
デイリーNKジャパンは昨年10月、約2年前に脱北した元朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士から話を聞くことができた。この元兵士は、黎明通りに次ぐ規模のタワマン群がある「未来科学者通り」の建設に動員された経験があるという。
「未来科学者通りは金正恩が自ら旗を振った事業でもあり、当初は安全管理についても関係当局から厳しく指導されていました。しかし、現場に供給されているはずの資材が足りないといったことが、次第に増えました。現場の監督には、その問題を追及する権限がありません。横流しは、もっと上の方(上層部)がからんでいたのでしょう。しかも、どんどん工期が迫ってくる。セメントと砂の混合比率や鉄筋の使用量が、上層階に行くほどいい加減になっていきました。北朝鮮で地震はほとんど起きませんが、いずれ何かの拍子に、建物がぜんぶ崩壊してもおかしくありません」
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面またこの元兵士によれば、現場では兵士や労働者の墜落事故が頻発したという。
LKPによれば、黎明通りでは昨年の秋以降、極秘裏に補強工事が行われており、現場周辺には兵士が配置され、厳戒態勢が取られているという。それで問題が解決できれば何よりだろう。ただその前に、住民に「万が一」のリスクを説明しておくべきだと思うのだが。