日韓関係が「ひとつの終わり」を迎えた歴史的必然

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韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は10日の年頭記者会見で、日本企業に元徴用工に対する賠償を命じた韓国最高裁判決を巡り「日本の政治指導者が政治的な争点とし、問題を拡散させているのは賢明でない」「日本政府はもう少し謙虚な立場を持たねばならない」と注文をつけた。

これに対し、菅義偉官房長官は11日、「韓国側の責任を日本に転嫁するもの」であるとして強く批判。するとまたもや韓国から反発の声が聞こえるという展開になっている。

日韓関係がこのところ険悪さを増している原因は、様々ある。

ただ、こうしたコミュニケーション上の「こじれ」が火に油を注いでいる部分も大きいように思われる。

現在では考えられないことだが、日韓の間には昔、政財界にわたる「日韓癒着」が、両国の様々な社会問題・国際問題の根となっていた時代があった。一例を挙げるなら、韓国中央情報部(KCIA)が日本で強行した「金大中拉致事件」の政治的な幕引きのため、韓国側の密使として田中角栄首相らに巨額のカネを持参したのが、「ナッツ姫」こと趙顕娥(チョ・ヒョナ)元大韓航空副社長の祖父・趙重勲(チョ・ジュンフン)氏だった。

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東西冷戦構造の中、日韓は米国を軸として実質的な同盟となり、歴史問題を脇へ置く形で利害を共にしていたわけだ。中でもとりわけ保守政治家同士の結びつきは強く、相互に利権を与えあっていたのである。

(参考記事:【日韓国交50年】岸信介から安倍晋三まで…首相一族の「在日人脈」と「金脈」

もちろんその時代にも、歴史問題は存在していたわけだし、韓国には日本への反発もあった。軍事政権時代には、韓国はそれを力で抑えつけていた部分もあったが、それだけではない。かつて日本の統治を受けた韓国の政官財界には、朴正煕元大統領をはじめ、日本語がペラペラの有力者が多かった。民主化後に大統領になった金泳三、金大中の両氏も日本語が流暢だった。

一方、日本の側には韓国語の出来る人がそれほど多かったわけではない。双方の円滑なコミュニケーションは、韓国サイドの日本語力の高さに依存していた部分が大きかった。

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しかしその後の世代交代により、韓国側のそうした人材はどんどん減った。日本に留学する韓国人は多いが、その中から政治や対日外交で重要な役割を担う人材がどんどん生まれているという状況ではない。グローバル化の中、韓国のエリートが日本語よりも英語や中国語の習得に向かうのは、仕方のないことだろう。

つまりある時代までの日韓外交の現場には、言葉の面で、外国同士でありながら外国同士ではないような部分があったのだが、それが急速に変わってしまったわけだ。文在寅大統領の側近の中に、日本語の上手な人はいないとされる。

かつては普通に出来たフランクな会話が、今ではまったく出来なくなってしまった。そのせいで日韓は、いきなりコミュニケーションの断絶を感じるようになった。そのインパクトは、確実に日韓関係に影響していると思う。