訪中した金正恩氏が「最愛の妹」を隠した理由

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は8日、金正恩党委員長が中国の習近平国家主席の招請を受け、7日から10日までの日程で訪中すると報じた。同通信はその中で、李雪主(リ・ソルチュ)夫人が訪中に同行していることを伝えている。

一方、この公式報道の中に、金正恩氏の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の名前はない。しかし実は、今回の訪中には金与正氏も同行していることが、朝鮮中央テレビの映像から確認できるのだ。

妹の友人「大量失踪」も

金正恩氏は昨年、3回にわたり訪中した。そのうち、李雪主夫人が同行したのは1回目と3回目で、金与正氏が同行したのは2回目だけだ。つまり、夫人と妹の2人が揃って訪中に同行するの初めてなのだ。

気になるのは、北朝鮮メディアが李雪主氏の同行を公表しながら、金与正氏の名前を伏せた理由だ。

訪中における李雪主氏の役割は明らかだ。ファーストレディーとして習近平国家主席夫妻との親交を厚くし、また北朝鮮と中国の友好ムードを盛り上げることだ。李雪主氏と習近平氏の夫人である彭麗媛氏は、ともに元歌手であるという共通点もある。

では、金与正氏はどうか。同氏は昨年、北朝鮮を支配する「白頭の血統」の一員として初めてソウルを訪問するなど、金正恩氏の使節として重要な役割を果たした。それはやはり、権力中枢の幹部としてというよりは、最高指導者の「妹」としての役割だった。

しかし今回、金与正氏の名前が伏せられたのは、彼女が中国の官僚たちと具体的な交渉事を行う実務者として同行しているからである可能性がある。実際、韓国の要人の間でも、金与正氏の実務能力に対する評価は高い。

金正恩氏が、昔から妹を大事にしてきたことはつとに知られている。大事にし過ぎて、彼女の友人を大量に失踪させる「事件」まで起こしたほどだ。

その後、金与正氏は金正恩氏の動線を管理するまでになる。地方にも頻繁に視察に出る金正恩氏だが、彼には一般人と同じトイレを使うことが出来ないという状況もある。そんな条件下で金正恩氏の動きを取り仕切る事ができるのは、やはり信頼できる身内しかいなかったのかもしれない。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

そのような過程を経ながら、金与正氏は兄の側近として着実に存在感を高めてきた。母親が元在日朝鮮人の帰国者であることもあり、金正恩氏らには頼りになる親戚が国内におらず、だからこそ兄妹の結束が何より大事であるという事情もある。

今後、金与正氏がどこまで重要な役割を担うようになるか、要注目だ。

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