日韓「レーダー照射問題」の背後にある韓国政治の闇

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日韓の「レーダー照射問題」が混迷の度を深めているが、こうした問題の理想的な解決策は、双方の実務者が「現場で何が起きたか」を互いに情報を出し合って事実を見極め、必要なら再発防止策を講じる――という形にあったはずだ。しかし、今回の問題はすでに実務レベルを飛び越えて政治問題化し、さらには世論化してしまっている。

北朝鮮まで「韓国は正気か」

そうなってしまった理由を探ってみたところ、日韓の情報関係筋から次のような解説を聞いた。

「韓国は、国軍機務司令部が解体されてしまったのが痛かった。そのため現場で何が起きたかを知るために、現場からの任意の報告に頼ってしまっている」

韓国国防省は昨年9月1日、軍の情報機関である機務司令部を解体し、新たに設置された軍事安保支援司令部の発足式を開いた。機務司令部は、朴槿恵前政権下で権限を越えて戒厳令布告を検討する文書を作成していたことが判明し、文在寅大統領が解体と再編を指示していた。

国防省直轄の機関だった機務司令部は、軍に対するスパイ行為を摘発する「防諜」が最大の任務だったが、それ以外にも軍事と安保に関わる様々な問題について調査し、大統領に報告していた。

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そして、その役割が拡大解釈され、民間人に対する不正な査察も行っていた。2014年に修学旅行中の高校生ら約300人が死亡した旅客船セウォル号の沈没事故で、世論の沈静化を狙い、遺族や同級生らを監視していたのが典型的な例だ。まさしく、「韓国政治の闇」の部分である。このような動きは当然ながら、世論の強い反発を誘った。

保守政権時代の積弊(積み重なった弊害)清算を掲げた文在寅政権としては、機務司令部にメスを入れないわけにはいかなかっただろう。ただ、機務司令部も不正だけを行っていたわけではない。

「今回の『レーダー照射』のような問題が持ち上がれば、機務司令部が大統領の意を受けて『捜査』にも似た客観的調査を行い、大統領に報告していた。そういった取り組みなしに、任意の報告に頼ってしまうと現場の『言い訳』や『保身』が入り込む余地が出来てしまう」(前出・情報関係筋)

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機務司令部の後身たる軍事安保支援司令部が発足しているものの、まだ十分に機能していないということなのだろうか。

朴槿恵前大統領から文在寅大統領への交代に伴い、韓国の政権は保守から進歩に大きく舵を切った。舵の切り方が大きいほど、社会や国際関係に現れる歪みが大きくなる。あの北朝鮮までが、「韓国は正気なのか」とのけぞるほどだ。

(参考記事:「韓国は正気なのか!?」文在寅政権に北朝鮮から非難

しかし、それこそが韓国政治の現実であり、この現実は簡単には変わらない。果たしてこの現実は、北東アジア情勢にどのような影響を与えていくのだろうか。