デイリーNKジャパンは昨年、「コンピュータに入力してはならない電子ファイル目録」と題された北朝鮮の内部文書を入手した。2015年5月の日付が入ったもので、韓国誌・月刊朝鮮2018年11月号はこれを、北朝鮮の体制に不都合な映像・音楽作品を取り締まるタスクフォース「109常務(サンム)」が作成したものだと断定している。
内容は視聴が禁止された映像・音楽・ソフト類のリストで、列挙されたタイトルはざっと300以上にもなる。その中には例えば、カンヌ映画祭でも上演された映画「ある女学生の日記」や、北朝鮮の国民的女優・洪英姫(ホン・ヨンヒ)の出演作もある。
禁止リストの筆頭に挙げられているのは、「絶世の偉人たちのお姿」が映り込んだ作品だ。金日成主席・金正日総書記・金正恩党委員長の金王朝三代が映った作品を軽々しくPCに保存するのは「不敬である」ということだ。
リストでこれに続くのが、「資本主義国家と傀儡(韓国)の映画、ドラマ、性録画物」だ。こちらについては、詳しい説明は必要あるまい。ちなみに「性録画物」には、かの有名な「喜び組」のビデオも含まれているのかもしれない。
(参考記事:【動画アリ】ビキニを着て踊る喜び組、庶民は想像もできません)このような具合に、禁止リストではある意味で「わかりやすい」作品群が列挙されている一方で、タイトルを見ただけではそれがどんな内容で、どうして禁止されたのかすぐにはわからないものも少なくない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面そのひとつが、「金星学院の教員たちと学生たちが2018年3.8節を迎えて行った非組織的で異色的な公演を録画した編集物」というものだ。
金正恩氏の妻・李雪主(リ・ソルチュ)氏の母校としても知られる金星学院は、音楽家や舞踊家などを養成するエリート女学院で、海外のスポーツ大会に派遣される「美女応援団」のメンバーも大部分がここから選抜される。
ただ、出身家庭が「超」の付くエリートでない学生たちの場合、権力者に目を付けられると、不本意な人生を強いられるケースもあるようだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面果たして、同校で行われた「異色的な公演」とはどのようなものなのだろうか。北朝鮮では一般的に、ヒップホップなど海外の影響を受けた音楽やダンスのことを「異色的」と表現する。また「3.8節」とは国際女性デーのことだ。
もしかしたら、美女応援団などとして海外へ行く機会もあり、また芸術の感覚にも優れた教員と学生たちが、女性が不当な扱いを受けているとされる祖国の現状への嘆き、あるいは反発、あるいはより良い未来への期待を込めて、斬新なパフォーマンスを披露したのではないだろうか。
この映像作品を入手するのは極めて難しいだろうが、是非とも一度、見てみたいものだ。