北朝鮮の金正恩党委員長が2018に行った公開活動うち、大半が外交と経済分野に集中し、軍事関連が大幅に減ったと聯合ニュースが報じている。聯合が北朝鮮メディアの報道に基づき集計したところ、金正恩氏は1月1日から今月14日までの間に、視察や首脳会談など計123件の公開活動を行った。
その内訳を見ると、外交・経済関連が計95件で全体の77.2%を占めた。その一方、軍事関連の活動は昨年の41件から今年8件と、80.5%急減したとしている。
こうしたデータを見ると、非核化を巡る米朝対話や南北対話の進展に合わせ、北朝鮮国内の緊張感も緩和しているように見受けられる。確かに、軍事情勢についてはそのように言えるだろう。2017年には北朝鮮国内においても、「いつ米軍が攻撃してくるかわからない」と恐怖に震える人々がいた。
また、金正恩氏が陣頭指揮を取った弾道ミサイルの発射実験などは、それ自体が一種の戦闘だった。金正恩氏の動きが事前に察知され、米軍のステルス戦闘機の急襲を受ける可能性はゼロではなかった。北朝鮮側とすれば、常にそのような可能性を考え、実戦さながらの厳戒態勢を取っていたはずなのだ。
さらに、新開発の兵器のテストでは事故がつきものであり、実際にミサイルの爆発事故などが多発していた様子もうかがえる。
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では今年、軍事的緊張の緩和を受けて、北朝鮮社会の緊張が解けたかと言えば、必ずしもそうではないのだ。
金正恩氏は核兵器開発をいったん成功させたことで、北朝鮮の政治・軍事強国化を達成できたと自負。次は経済強国を目指すとの目標を掲げている。そしてそれを実現せんがため、今年は精力的に経済部門の視察を行ったわけだが、受け入れた現場にはこれまで以上の緊張感が漂った。
金正恩氏が行く先々で管理不備を批判し、怒声を上げ、無理難題を押し付けたからだ。以前ならば、責任者が処刑されてもおかしくない事態である。
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しかしそもそも、まだ国連安保理の経済制裁も解けていない内から、経済強国めがけてまい進するのはムリがある。それでも北朝鮮においては、最高指導者がいったん命令を下せば、それは何を置いても達成すべき「掟」となる。多少のムリがともなっても、現場は取り組まなければならない。
しかし案の定と言うべきか、そのムリが祟り、死亡事故が起きた事例も報告されている。金正恩氏と北朝鮮国民のそれぞれの「戦い」は、いまだ続いているのだ。
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