北朝鮮の人々は毎年、自然災害に苦しめられている。雨期には水害、夏には干ばつ、冬は大雪。とりわけ今の時期、北部の山間地域では最低気温が氷点下30度近くまで下がる。まさに「凍土」という表現がふさわしい。慢性的なエネルギー不足から暖房のための社会的インフラの整備は進んでおらず、「冬になると飢えよりも寒さの方がよっぽどツラい。凍死する住民も多い」との声もある。

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韓国のリバティ・コリア・ポスト(LKP)によると、11月22日から北朝鮮北部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)と両江道(リャンガンド)、慈江道(チャガンド)の山間部で大雪被害が起きている。同日から25日の間、清津(チョンジン)市と会寧(フェリョン)市、茂山(ムサン)郡をはじめ、咸鏡北道の北部地域に0.6メートルから1.6メートルまでの大雪が降り、道路一面が凍結したという。

「中学生までが動員され凍結した道路の修復作業にあたっている。主要道路はなんとか車両の往来ができるようになったが、農村部の道路はまだ手をつけていられない」(LKPの消息筋)

酷寒に苦しめられているのは庶民だけではない。朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は毎年12月から翌年3月末まで、つまり厳冬期の真っ最中にも、まともに食事をすることもできないまま厳しい冬季訓練を行う。空腹に耐えかねた兵士が北朝鮮国内だけでなく、中国側に越境して略奪を働くケースも多い。

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また、LKPの両江道の消息筋は26日、「大雪によって三池淵(サムジヨン)群をはじめ北部地域のすべての建設工事が中断された」と伝えている。建設現場に食料を届けるため、鉄道と道路の復旧に全ての人材を投入したためだという。これ自体はまっとうな対処だが、それがさらなる犠牲者を生み出すかもしれない。

金正恩氏は今、北朝鮮で「革命の聖地」として知られる三池淵群郡の観光開発プロジェクトを最重視していると見られる。しかし、三池淵郡の建設現場の安全対策は劣悪で、実際に事故も発生している。

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そうでなくても両江道は、「今年の夏の干ばつによる被害を最も深刻に受けた地域だ」だとLKPの消息筋は語る。

「夏には干ばつに悩まされ、秋になって一息ついたと思ったら、今度は突然の大雪で大混乱が起きている」

このように次から次へと自然災害が発生する事態を受けて、北朝鮮国民の間では「人工太陽が三つある国なので、空がおかしくなっている」という話が流行っているという。

北朝鮮で金日成主席は「民族の太陽」と呼ばれる。誕生日である4月15日にも「太陽節」という名前が付けられてる。金日成氏と金正日総書記の遺体が安置されているのは錦繍山(クムスサン)太陽宮殿だ。さらに、金正日氏が君臨するようになって「民族の太陽」は2つとなり、金正恩時代になってからは「太陽」が3つになってしまった。

そのため庶民は「太陽が1つ(金日成氏)の時代は災害もなく平穏だったが、2つ(+金正日氏)の時代になって気候がおかしくなった。今は3つ(+金正恩氏)になってしまったので、もうどうしようもない」と、笑えないジョークを飛ばしているというのだ。

言論の自由がない北朝鮮では不平不満を表だって口にすることはできず、最高指導者の権威を傷つけるようなことを言えば、厳しく罰せられる。

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そんな状況にあっても、たまにはジョークを言ってうっぷんを晴らさずにはいられないのだ。自然災害の度に、国の無能無策のために苦しめられている庶民が、太陽=最高指導者を揶揄するのも当然だろう。