北朝鮮当局は今月、国境地帯に対して「人身売買を反逆罪として強く処罰せよ」との指示を出した。これに基づき、人身売買団に対する大々的な取り締まりが行われている。しかしその一方、同国社会には人身売買の被害者に対する厳しい視線も存在する。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の両江道(リャンガンド)の情報筋によると、金正淑(キムジョンスク)郡では国家保衛省(保衛部、秘密警察)と人民保安省(警察庁)が合同で人身売買団に対する取り締まりを行った。

その結果、逮捕された4人に対する裁判が、今月15日に金正淑郡の中心地、新坡(シンパ)で公開で行われた。

動員された数百人の住民が見守る中で行われた裁判だが、裁判長は判事ではなく保安署(警察署)の幹部だった。この幹部は「人身売買は国を売り払う反逆行為で、到底許されざる犯罪」などと罪状を読み上げた上で、主犯の40代女性に労働教化刑(懲役)15年、ターゲットを物色しブローカーに引き渡した男女3人に12年の刑を言い渡した。

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今回の裁判では、人身売買とは別に、商売上のことでケンカとなり相手を殴った男性2人に対して、社会秩序びん乱罪で労働教化刑3年が言い渡された。

閉廷後、保安署幹部は住民に向けて「人身売買に加担したり、中国(人)とグルになって人身売買に介入している者は11月末までに自首せよ」と呼びかけた。また、「他人の人身売買を知りつつも通報せずに黙認した者も、人身売買犯と同様に処罰する」と述べた。

国際社会は、人身売買を含む北朝鮮の人権問題をついて厳しい批判を続けている。最近は、国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチが、北朝鮮の性暴力をまとめた報告書を発表した。それに対して北朝鮮は激しく反発しているものの、一方の国内では取り締まりを強化するという両面戦術をとっている。

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両江道の恵山(ヘサン)の別の情報筋によると、金正恩政権になってから「密輸や携帯電話の使用など違法行為を根絶せよ」との指示が矢継ぎ早に発せられ、地域へ統制が強化されている。地域住民は多かれ少なかれ違法行為に加担していることもあって、気が気でないという。

この情報筋は人身売買について「1990年代に国が食糧配給をしなくなったため、(自ら望んで被害者が)中国に売られていったのが始まり」「重くなる一方の税金や組織生活(動員)の負担に苦しむ若い女性は、脱北するために自発的に売られていった」などと述べた。

北朝鮮ではこのように、人身売買や性暴力の被害者に対し、その「落ち度」を責める見方が少なからず存在する。

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北朝鮮国民の中に、経済的苦境から逃れるために手段を問わなかった人々がいたのは間違いないが、だからといって、人身売買が正当化されるものではない。人身売買の犠牲となった女性たちを苦しめるのは、直接的な暴力、性暴力であると同時に、被害者に落ち度があったとする社会の視線なのだ。