兵力数では世界3位を誇る北朝鮮の朝鮮人民軍だが、その実態はポンコツそのものだ。

食糧配給における横流しがひどいため、末端の兵士は常に腹をすかせ、中には栄養失調に苦しむ者すらいる。幹部たちはそんな兵士の窮状も気にかけず、権限を悪用した汚職や性的虐待に明け暮れている。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

生きるために協同農場などを襲撃し食糧を強奪する兵士たちは、民間人から「馬賊」呼ばわりされてきたが、今後は「詐欺師」というさらに不名誉な呼ばれ方も加わりそうだ。民間人相手に投資詐欺を働いているからだ。

米政府系ラジオ・フリー・アジア(RFA)の平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋が語った事の顛末は次のようなものだ。

朝鮮人民軍第8軍団傘下のある部隊は、金鉱開発を名目に複数のトンジュ(金主、新興富裕層)から投資金を集めた。ところが、金鉱開発には全く手を付けず、「開発費」という名目で投資金を騙し取ったというのだ。

別の情報筋が紹介したケースは次のようなものだ。

軍部隊傘下の企業所が、企業の名義を貸す条件でトンジュからカネを受け取ったが、それ以降はあれこれ言い訳をして約束を守ろうとしなかった。そのため、トンジュが当局に訴え出たという話だ。

北朝鮮の国営企業や国の機関は、運営費を確保するために、一定額の利益を納める条件で民間業者に名義を貸し与えている。一見すると◯◯市商業管理所が運営する食堂や美容室だが、経営者は民間人という「なんちゃって国営企業」である。軍も同じようなことを始めたということだが、どういうわけか名義は貸し与えず投資金を騙し取ったということだ。

いずれのケースも怒ったトンジュが「信訴」を行った。

北朝鮮の警察庁に当たる人民保安省は、軍関係の犯罪、不正行為に対する捜査権限を持っていない。そのため「目安箱」的な「信訴」というシステムを使って訴えるしかないのだ。

トンジュは軍の上級機関に対して、明確な判断を下すことを要求した。軍当局は事態の把握に乗り出したが、今に至るまで一切の結論を出していない。

国と人民を守るために存在する軍隊が、なぜ人民を相手に詐欺を働いているのか。

それはカネがないからだ。

北朝鮮のすべての工場、企業所は、2014年の「5.30措置」で、独自の経営権を持つようになったと同時に、一切の運営費を自力で調達すること、つまり自力更生を求められるようになった。それが軍隊にも拡大され、各部隊には「自力更生せよ」との内部指示が下された。

金欠に陥った軍部隊は、カネになりそうなアイテムを掲げ、大手のトンジュに接近し「労働力と装備は用意する」と投資を持ちかけるケースが増えていると情報筋は語る。軍部隊はカネを受け取ったらすぐに契約を破棄し、カネを返そうとしないのだという。

ここまでくると、軍事力という物理的暴力を背景とした「マフィア」への道を辿っていると言えよう。

「社会に蔓延した不条理と違法行為の余波が軍部隊にまで伝わり、軍幹部は私利私欲を満たすために手段を選ばない」(情報筋)

このようなトラブルは激化しつつあるが、国はこれと言った対策を打ち出せていない。住民からは「人民の生命、財産を保護するべき軍隊が、カネ儲けに目がくらみ、人民を騙している」「こんな軍隊がどうやって国を守るのか」との声が上がっている。