北朝鮮メディアの対日非難が、激しさを増している。

対韓国宣伝ウェブサイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は29日、「安倍一味は米国が予想外に我々との対話に臨み、シンガポール朝米首脳会談という歴史的事変まで実現するや、驚愕して平壌のドアをノックし始めた」と指摘。

朝鮮中央通信は28日付の論評で「日本はますます深刻化する政治的孤立から脱するために、朝日首脳会談に対する未練を持ってわれわれに各方面から接近してみようと東奔西走しながらも、依然として制裁・圧迫うんぬんと『拉致問題』を持ち出して世論を汚している」と主張した。

こうした対日非難は、今に始まったことではない。今月は特に、旧日本軍が従軍慰安婦を虐殺した動画があるなどと言及しながら、歴史問題に関する日本の姿勢を批判した。

(参考記事:【動画】日本軍に虐殺された朝鮮人従軍慰安婦とされる映像

ただ28日には、朝鮮中央通信が上述の論評のほかにもう1本、朝鮮労働党機関紙の労働新聞と内閣などの機関紙である民主朝鮮が各1本の、計4本もの論評で日本非難を展開した。同じ日付で4本というのは、さすがに多い。

内容を見ると、労働新聞が菅義偉拉致担当相(官房長官)のことを「鼻持ちならない」などと罵倒し、民主朝鮮がアフリカ東部ソマリア沖・アデン湾での自衛隊による海賊対処活動に対し、「海外膨張の野望のためだ」と難癖を付けるなど、色々なネタをこねくり回している。つまり中身は何でも良いから、ここで日本を批判して置こうという姿勢が見えるのだ。

問題は、北朝鮮がこのような攻勢に出てきた背景だ。もしかしたら金正恩党委員長は、今後の米韓との対話に、やや悲観的になっているのではないか。

国連では来月中旬の総会本会議で、北朝鮮の人権侵害を非難し状況改善を求める決議が採択される。もはや毎年恒例の動きだが、恐怖政治で体制を維持する北朝鮮にとっては絶対に許容できない問題だ。

米トランプ政権や韓国の文在寅政権は、非核化や南北融和を優先して北朝鮮の人権問題が目を逸らしてきたが、ほかの民主主義諸国の手前、まさか国連での決議で反対したり棄権したりできるはずもない。だから形だけ賛成し、さっさとやり過ごそうというのがホンネだと思うのだが、北朝鮮はそれすらも不快なのだ。

金正恩氏は近いうちに韓国を訪問すると言明しているが、決議をまたぐと、さすがにそのようなムードは遠のく。しかし金正恩氏としても、自ら始めた対話戦略を簡単に捨てるわけにはいかない。では、どうするか。

北朝鮮は歴史問題を強調して日本との摩擦を激化させ、それをテコに、韓国世論を自らに引き寄せ、来年のどこかの時点で、新たな南北融和のうねりを作り出そうと布石を打っているのではないか。

もう少し検証が必要な見方ではあるが、北朝鮮がこのような動きを具体化させる可能性は十分にあると思う。