北朝鮮の警察官が苦しむ「どうにもならない悩み」

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絶大な権限を振りかざし、庶民を痛めつけてきた北朝鮮の保安員(警察官)。しかし彼らとて、いついかなる時にも「強者」であるというわけではない。

(参考記事:美女と「日本製の部屋着」に狂わされた、ある北朝鮮警察官の選択

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、公共機関の職員の出勤率が著しく低下している。一部では業務が麻痺するほどの状況になり社会問題となっているという。保安署(警察署)の公民登録課など「食べる卵のない」部署ほど出勤率が低調なようだ。ここで言う「卵」とはワイロのことだ。

当局は、全国が未曾有の食糧危機にあった1990年代後半の「苦難の行軍」の時代にも、社会秩序と体制を底辺から支える保安員や保衛員(秘密警察)には、ふんだんな食料配給を行い、「鉄の飯炊き鍋」と言われていた。

取り締まり権限を持つ彼らは、市場などに出かけてご禁制の品を扱っている商人にいちゃもんを付け、ワイロを搾り取ることで生活を成り立たせてきた。一般住民に接する機会や、取り締まり権限を持たない部署の保衛員でも、食料配給で食べていくことができた。ところが、最近になって配給が止まってしまったのだ。

職場からもらえるのは、もはやコメ1キロすら買えないほどの月給だけ。生きていくには市場で商売をするしかなく、保安署に出勤しなくなったというわけだ。しかし、生き馬の目を抜く今の北朝鮮で、今さら「殿様商売」を始めたところでそう上手くいくわけがない。

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今までいたぶる対象だった商人と、同じところで商売するのはプライドが許さないという保安員もいるだろう。

そうした例に当てはまるかはわからないが、情報筋は、平城(ピョンソン)市の保安署一般監察課の指導員の困窮ぶりを紹介した。

この指導員は四六時中、酔っ払っているほど酒浸りの生活を送っていた。ところが、最近になって酒はおろか食事にすらまともにありつけない状況となった。いつも右手を震わせており、栄養失調状態に陥っている。

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この指導員は兵役を終えた後、人民保安省政治大学を卒業し、農村地域の工場の保安所(派出所)に配属された。その後、昇進して今のポストに就いた将来有望な人材と言われていたが、今では餓死寸前まで追い込まれたということだ。

さらに状況を悪化させているのは、金正恩党委員長が不正行為の根絶を叫んでいることだ。最高指導者の命令とあっては、おおっぴらにワイロを受け取ることもできない。

学校や病院でも状況は似たり寄ったりだ。情報筋は、公立学校の状況について次のように説明した。

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「教師が市場で商売をするようになり出勤率が下がった。ある教師は5〜6科目を1人で教えることとなり、専門外のことでも教えなければならない。教育の質が目に見えて下がり、親から恨みを買っている」