金正恩党委員長は「国外への情報流出、国外からの情報流入」に対して極めて厳しい姿勢を取っている。昨年末には、電話帳を海外に売ろうとした6人が銃殺されている。電話帳には、国家機関の電話番号など北朝鮮が国家機密扱いする情報が掲載されているからだ。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)10月初め、北朝鮮国内の情報を密かに海外に伝える仕事に携わってきた保衛部(秘密警察)の幹部が逮捕された。スパイ容疑での逮捕だけあって、重罰は免れないと思われる。
逮捕されたのは北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)郡の保衛部に所属する幹部だ。
この幹部は、20〜30代の知人に指示して、国内の内部資料や住民の思想や生活状態を伝える映像や写真を密かに撮影し、カネと引き換えに海外に売り払っていた疑いが持たれている。知人3人も協力者として逮捕され、現在取り調べを受けている。
この幹部の行為は刑法63条の祖国反逆罪、64条のスパイ罪などに当たる。最高刑は死刑だ。北朝鮮では、政治犯に対して連座制が適用され、本人のみならず家族や親戚も不利益を受ける。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面管理所(政治犯収容所)、教化所(刑務所)など北朝鮮の刑事施設の環境は極めて劣悪で、収監された人は様々な暴力、性暴力、病気にさらされる。罪状次第では、完全統制区域に入れられ、一生をそこで終えることになる。
家族全員が収容所送りにされることを恐れた幹部の妻は保衛部を訪れ「今まで裏切り者と暮らしてきたのが恥ずかしい」と述べた上で、慌てて離婚の手続きに入った。また、「子どもたちも父親と縁を切らせる」として姓を母方の姓に変更する申請を裁判所に提出している。
北朝鮮では政治犯の配偶者は離婚することで連座制の適用を逃れることができるが、血の繋がった肉親は適用されてしまう。今のところ、子どもたちへのお咎めはない状態だが、今後どうなるかはわからない。