北朝鮮の最高学府・金日成総合大学を卒業した脱北者で、韓国紙・東亜日報の名物記者であるチュ・ソンハ氏の近著『平壌資本主義百科全書』では、北朝鮮の人々の知られざる生活実態が生々しく紹介されている。

同書を通じて改めて確認されたことのひとつが、北朝鮮の富裕層が今なお「メイド・イン・ジャパン」を愛しているということだ。平壌に住むある御曹司はチュ氏のインタビューに、次のように答えている。

「(周りから)良い暮らしをしていると思われたければ、弾ける人がいなくてもピアノ1台は家になきゃダメですね。日本のヤマハのピアノが2万ドル、中古なら7000~8000ドルくらいです。家具もすべて日本製を最高とみなします。韓流なんか知りませんよ」

北朝鮮の富裕層が日本製品を愛するのは、在日朝鮮人によって持ち込まれた様々なモノに触れながら、そのクオリティの高さに慣れているからだ。経済制裁によって入手が難しくなっても、中国製などの代替では満足できないのである。

日本製のファンは、何も富裕層ばかりではない。今でこそ韓国製品にも人気が集まるようになったが、長らく、庶民にとっても日本製品は憧れの的だった。同書では、こんなエピソードも紹介されている。2003年に西海岸の南浦(ナムポ)市であった話だ。

平壌の貿易会社に勤務する男性が、出張で南浦を訪れた。ふとしたきっかけで高級売春宿を訪れた彼は、目もくらむような美女の接待を受ける。

だが、宿を後にして初めて、所持金3000ドルを盗まれたことに気づいた。彼は、知人である地元の保安員(警察官)に相談。保安員は「俺が取り戻してやる」と豪語し、売春宿に向かった。

ところがその保安員は、宿に足を踏み入れるや戦意喪失してしまった。スケスケの「日本製の部屋着」を着た美女に、すっかり幻惑されてしまったのだ。

結局、タダでサービスを受けただけで引き下がってきた保安員だったが、後になって「もしバレたら大変だ」と不安になった。悩んだ挙句、平壌の人民保安省(警察庁)に自首。これがきっかけとなり、高級売春宿と常連だった地元幹部たちが芋づる式に摘発される大事件に発展したという。

そして捜査の過程で明らかになったのは、売春で荒稼ぎしていた娼婦たちが日本製の衣類を大量に所有していたということだ。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

こんな具合に、北朝鮮でカネのある所には、必ず日本製品がある。現在は経済制裁により、日本製品は全面禁輸となっているはずなのだが、どのようなモノが、どのようなルートで調達されているか気になるところだ。