金正恩党委員長の寵愛を一身に受けてきた北朝鮮版ガールズグループ、モランボン楽団の名称が微妙に変わったうえ、国内における序列が下がっているもようだ。

今月4日、キューバのディアスカネル国家評議会議長が訪朝し、同日、ディアスカネル氏の訪朝を歓迎する芸術公演が行われた。北朝鮮メディアは翌日、「歓迎芸術公演の舞台には、勲功国家合唱団、サムジヨン管弦楽団、モランボン電子楽団、ワンジェサン芸術団の芸能人が出演した」と報じた。

勲功国家合唱団とモランボン楽団は、これまでに何度も合同公演を行っているが、毎回必ずモランボン楽団が先に紹介されてきた。さらに、今年2月の韓国公演の際に編成されたばかりの三池淵(サムジヨン)管弦楽団にも先を越され、モランボン楽団は3番手となっている。

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2012年に創設されたモランボン楽団は、女性だけのメンバーで「北朝鮮版AKB」「北朝鮮版少女時代」などと呼ばれてきた。同楽団は、それまで北朝鮮の現代音楽を牽引してきたポチョンボ電子楽団の後継団体とされており、団長の玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏は、ポチョンボの看板歌手でもあった。

玄氏は、昨年には朝鮮労働党中央委員会候補委員に抜擢されたが、歌手が党中央委員会のメンバーになるのは史上初だ。

金一族に近いのは玄氏だけではない。金正恩氏の実兄である金正哲(キム・ジョンチョル)氏は世界的なギタリスト、エリック・クラプトンの大ファンとして知られ、これまでにドイツとシンガポール、イギリスのコンサート会場を訪れた様子がメディアによってキャッチされている。2015年5月にロンドンを訪れた際には、かつてモランボン楽団に在籍していた女性ギタリストのカン・ピョンヒ氏を同伴していた。

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これまでの数年間、北朝鮮の音楽界はモランボン楽団を中心に回っていた。北朝鮮と中国との関係が極度に悪化していた2015年には、仲直りのきっかけとすべく北京での初公演も企画された(結果的に中止)。

こうしたトラブルがあったものの、その後も国内では精力的に公演を行い、楽団員たちが北朝鮮のスターだったことは間違いない。しかし、ここ最近の北朝鮮をめぐる国際情勢が彼女たちの境遇を変えるかもしれない。

北朝鮮は今年2月、韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪に合わせて三池淵管弦楽団を韓国へ派遣した。韓国公演に合わせて特別編成したものだった。公演ではセンターを務めたグラマラスな肉体を誇る美人シンガーが、悩殺的かつ激しいダンスを披露。韓国での評判は概ね良好で、まさに南北融和を象徴する楽団として台頭した。

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どうやら、韓国公演の好評ぶりに気を良くした金正恩氏は「浮気心」に火がついたのか、今後はこちらに愛情を注ぐことにしたようだ。先月には、朝鮮労働党の創建73周年を記念して平壌で「三池淵管弦楽団劇場」がオープンした。新たに誕生した楽団の名を冠する劇場が、これほど早く建てられるのは極めて異例だ。

一方のモランボン楽団は、あれほど頻繁に行われていた公演が、今年2月以後はピタッと止んだ。金正恩氏にとっての「ナンバーワン」でなくなった同楽団が、今後どのような形で活動を継続するのか注目される。もっとも、過去にはメンバーが銃殺され、強制解散された楽団もあっただけに、モランボン楽団の現在の境遇がそれほど悲惨というわけではない。

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一方、楽団の序列の変化に影響を受けていないと思われる人物がいる。先に紹介した玄松月氏だ。玄氏はモランボン楽団の団長だったが、三池淵管弦楽団の団長でもある。もしかすると玄氏は様々な楽団のプロデュースを通じて、自らの政治的地位を上げるという野心をもっているのかもしれない。金正恩氏の妻である李雪主(リ・ソルチュ)氏が歌手として自分の存在をアピールしてファーストレディーの座を射止めたように。