元徴用工への賠償金は韓国政府が肩代わりすべきだ

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日本の植民地時代に強制労働させられたとして韓国人の元徴用工4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審で、韓国最高裁は30日、個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、同社の上告を退けた。これにより、同社に1人あたり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた判決が確定した。

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日韓が1965年の国交正常化に際して締結した請求権協定では、日本が韓国に3億ドルを無償供与することなどで、国と国民の間の請求権問題については「完全かつ最終的に解決された」とされている。

それなのに今、なぜこのような事態になっているのか。早い話、日本政府が過去、正当性の疑わしい軍事独裁政権と結んだ約束が、韓国の民主化とともに反故にされかかっているということだ。これは、対北朝鮮外交においても重い教訓とすべき問題だ。体制に都合の悪い人々を片っ端から弾圧する金正恩政権は、過去の韓国の政権と比べてもなお悪い。

しかしいずれにしても、約束は約束である。韓国政府は従来、請求権協定を支持する立場だ。2005年には従軍慰安婦、サハリン残留韓国人、原爆被害者の問題は請求権の対象外とする一方で、徴用工問題は解決済みとしてきた。文在寅大統領は今年9月の安倍晋三首相との会談で「司法府の判断を尊重する」と述べているが、政権が変わったからと言って、国家間の約束事を一方的に変更するのは許されない。

かく言う筆者も、過去の歴史の清算は個人の人権を尊重しつつ、正しく行われるべきであると考えている。だが今回の問題に関して言えば、韓国政府にも重大な責任があると思う。問題がここまでこじれてしまったのは、過去の韓国政府が、国民の主張と正しく向き合ってこなかったからだ。

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請求権協定に基づいて3億ドルを受け取ったのだから、それを原資に、韓国政府が賠償金を肩代わりするのが筋だろう。

同様の訴訟は、新日鉄住金のほか不二越(富山市)など約80社を相手にした計14件が係争中だ。今回の確定判決を受け、賠償命令が相次ぐ可能性が高い。韓国政府が認定した元徴用工は約22万6千人(故人を含む)に及び、仮に全員に対して1千万円の賠償金が認められたとすると、合計で2兆2600億円に達する。今になってそのような数字を日本に請求するというのは、正気の沙汰ではない。

そもそも韓国のマスコミや学者は、日本との過去の清算を捻じ曲げた軍事政権の政治家や官僚、そして彼らと癒着した財閥の責任をもっと追及すべきなのだ。元徴用工らに対する補償や賠償が適切に行われてこなかったのは、彼らに届けられるべきおカネを、政治家や財閥が食い物にしたからだろう。

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あるいは、個人に行くべきおカネがまず国家による投資に使われ、産業基盤に化けた部分も大きい。だとすれば、それを土台にした経済発展を、韓国の多くの国民が享受しているわけだ。だったら元徴用工への賠償も、韓国の公的資金で賄われて当たり前だ。

筆者は、元徴用工らが訴訟を提起すること自体は支持している。個人の損害は法的に認定されるべきだし、責任の所在が明確にされることも重要だ。しかしそのことが、日韓関係の現在と未来に悪影響を及ぼしてはならない。日韓にはともに手を携えて、取り組むべき課題が多いのだから。