「最高指導者の言うことに文句も言わず、黙々と従うロボット」

北朝鮮の人々に対してこのようなイメージを持っている読者は多いのではないだろうか。ところが、実際は表向きは金正恩党委員長を褒め称えながらも、裏では毒を吐き、官憲の横暴にも様々な形で抵抗するという「面従腹背」が、北朝鮮の人々の真の姿なのだ。

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そんなたくましい人々も、今後しばらくはおとなしくするしかないだろう。当局が「言葉反動」(反体制的な言動)への取り締まりを強化しているからだ。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、最近になって人民班(町内会)、職場の朝礼、夜の総和(総括)などで「党の政策に不満を示すことは許されない」という指示が繰り返し伝えられている。

「数日前には何人かが保衛部(秘密警察)に呼び出され『国家的な動きに対して党の政策と異なることを言って、少し生活が苦しいと不平不満ばかり言っている』などと大目玉を食らった」(情報筋)

このような取り締まりが始まったのは、今年に入って3回も行われた南北首脳会談に対して賛否両論の様々な評価がなされているからだ。

金正恩氏は1月1日に発表した施政方針演説「新年の辞」で、南北関係の改善を主要課題として打ち出した。実際、昨年までは「核戦争前夜」の暗雲が立ち込めていた朝鮮半島は、今年に入ってから急速に雪解けムードに覆われた。初回の南北首脳会談が行われた当初は、今後への期待が大いに高まり、金正恩氏の評価もうなぎのぼりとなった。

ところが、首脳会談を何度やっても、制裁は解除されず、暮らしも一向に楽にならないことから、「何も変わっていない」「暮らしが苦しいのに首脳会談などに気を使っていられない」などと言った否定的な声が上がり始めた。

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そのような不満や動揺を押さえ込み、国内の結束を高めるために、取り締まりを強化したものと思われる。

「『言葉反動』で当局に逮捕されることはあまりないのだが、ある人民班長は『管理所(政治犯収容所)送りになるかもしれない、言葉に気をつけろ』『余計なことを言うな、下手すれば家族全員が突然連れ去られるかもしれない』などと脅かしている」(情報筋)

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あまりに殺伐とした状況に、さすがの北朝鮮の人々も「お口にチャック」をして政治的な案件には口をつぐむようになってしまった。町で広がる「自分たちの一挙手一投足が調査されている」との噂も恐怖感を煽っている。

韓国の毎日経済新聞は、北朝鮮の秘密警察の総本山である国家保衛省が先月、地方組織に対して、一般国民や幹部らの言動、思想動向を事細かく監視、報告せよとの指示を下したと報じている。韓国の文在寅大統領が平壌で行った演説などについての反応、南北朝鮮の経済を比較する言動やそれに対する賛否など、発言者、時間、場所まで報告するように指示している。

何らかの指示や命令が下されれば、おとなしくして取り締まりの嵐が過ぎ去るのを待ち、ほとぼりが冷めるころに元通りにするというのが、北朝鮮の人々の生活の知恵だ。しばらくすれば、町ではまた毒舌が飛び交うようになるだろう。

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