北朝鮮の内閣などの機関紙・民主朝鮮は21日、欧州連合(EU)と日本が国連総会に北朝鮮の人権問題に関する決議案の提出準備を進めていることについて、「われわれの社会主義制度を圧殺するための犯罪的計略」であると非難する論評を掲載した。また、北朝鮮の対韓国宣伝ウェブサイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」も19日、同様の論評を掲載している。

韓国大統領の重大疑惑

国連総会は昨年末まで13年連続で、北朝鮮の人権侵害を非難する決議を採択している。決議案は毎回、EUと日本が共同提出してきた。金正恩党委員長は人権問題で非難されるのを最も嫌っており、毎年この時期はかなりナーバスになっていると見られる。

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金正恩氏は特に、「過去の清算」が済んでいない日本から人権問題を追及されるのが気に入らないと見られる。

史上初の米朝首脳会談が実現した今年は、トランプ米大統領が北朝鮮の人権問題を追及しない姿勢を示したため、金正恩氏もこれまでは比較的リラックスして過ごせたのではないか。しかしだからといって、米国全体が人権問題軽視に変わったわけではない。最近でも、上院外交委員会では北朝鮮に政治犯収容所の撤廃を求める決議案が通過している。

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決議案は来月15~20日の国連総会第3委員会で討議され、ここを通過すると、12月の国連総会本会議で採択される。この期間中、北朝鮮は日本を激しく非難する一方、水面下では韓国に対する工作を強めると見られる。

韓国の文在寅大統領はトランプ氏と同じく、北朝鮮との対話を優先し、人権問題は後回しにしたいのがホンネだ。だが、決議案の採択で棄権に回るのは簡単ではない。2007年の人権決議案の採択の際、当時の盧武鉉政権は棄権している。この際、同政権は採択前に北朝鮮に「おうかがい」を立てていた疑いがあるのだが、大統領秘書室長として疑惑の中心にいたのが文在寅氏なのだ。今回も同じような行動に出れば、国内外から批判を浴びるのは火を見るより明らかだ。

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北朝鮮は韓国政府のこうした立場を見透かしたうえで、揺さぶりを強めるだろう。

実際、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は今月10日に行われた国政監査の際、今年の北朝鮮人権決議案について「棄権しない」との考えを表明しているのだが、北朝鮮はすかさず牽制球を投げている。前述した「ウリミンジョクキリ」の論評で、「南朝鮮(韓国)当局は分別を失って敵対勢力に惑わされず、気を引き締めて穏当に対処すべきだ」と主張しているのだ。

北朝鮮はまた、拉致問題をカードに、金正恩氏と会談する意思を表明している安倍晋三首相にも働きかけを行う可能性がある。日本が、それに乗るべきでないのは言うまでもない。トランプと文在寅の両氏が北朝鮮の人権問題から距離を置いている今こそ、日本は北朝鮮にとって「最も厄介な存在」になるべきなのだ。それでこそ、拉致問題を巡る交渉力も増すのである。

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