「わが国は災害を口実にした物乞いだ」北朝鮮国民の悲しいホンネ

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

北朝鮮は、一時期よりは改善したものの、依然として食糧供給が脆弱な状態にある。ドイツの飢餓援助機構と米国の国際食糧政策研究所が今月発表した2018年版世界飢餓指数で、北朝鮮は調査対象119カ国中109位となり、5段階評価の3番目の「深刻」と評価された。全人口の43.4%が栄養失調とされており、昨年の40.8%、2010年の32%より悪化している。

それに対して国連や様々な団体が援助を行ってきたが、反対の声も少なくない。「食糧支援を行っても、本来対象となる子どもや妊婦、老人には渡されず、軍隊に渡るだけだから」との理由からだ。

(参考記事:「私の故郷に人道支援をしないで欲しい」ある脱北者の血のにじむ手記

韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使は著書『3階書記室の暗号』の中で、大飢饉「苦難の行軍」で飢えに苦しむ北朝鮮の子どもたちのためにデンマークから大量のフェタチーズの無償提供を取り付けたが、金正日総書記がそれを軍に与えてしまったというエピソードを紹介している。

ただし、国際社会からの援助のすべてが軍隊向けに流用されているとは言えない。「まともに」流用されているなら、最近までのように、末端の兵士が餓死寸前に追い込まれることはないだろう。北朝鮮の軍隊では近年、飢えに耐え兼ねた脱走兵が中国に越境し、強盗殺人を犯すなどの事件が頻発した。

(参考記事:【スクープ撮】人質を盾に抵抗する脱北兵士、逮捕の瞬間!

こうした「飢え」を原因とする軍紀の乱れは、「マダラス」や「書類整理」と呼ばれる性的虐待などを嫌った兵役忌避と相まって、北朝鮮の軍事力を地盤沈下させていると見られている。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

支援食糧の流用問題は、輸送過程でかなりの量が横流しされてしまうことにある。軍隊向けのみならず、あらゆるところで転用、横流しが起きて、本来受け取るべき人びとのもとに届かないのだ。

(参考記事:兵士の月給はたった9円…金正恩氏の「腹ペコ軍隊」は餓死寸前

北朝鮮国内では、北関係の改善を受けて、海外からの食糧援助の再開と拡大に期待する声が上がる一方で、横流しの深刻さを知るがゆえに効果を疑問視する声も上がっている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、当局は「経済の問題はまもなく解決するだろう」と宣伝しているが、それを現地の人々は「国際社会の人道支援が再開される」という意味で受け止めている。同時に人道支援の効果については、懐疑的な見方をしているという。

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

国際社会の制裁下に置かれている北朝鮮だが、この間も食糧支援は続けられている。今年も栄養失調の子どもや老人に対するかなりの量の食糧支援が行われたが、清津(チョンジン)市の育児院と保育院(孤児院)に対して贈られたはずの小麦粉数十トンを政府機関やその幹部が横流ししたことが発覚し、批判を浴びている。

現地の別の情報筋によると、道内の多くの学校が国際援助団体の支援の対象に指定され、パンと豆乳が配給されている。しかし、現場は日々、横流しとの闘いだ。

「国際支援団体の食糧支援は透明性が保証されてこそまともに機能するが、支援団体が少しでも監視を怠るとパンが小さくなったり、軽くなったりする。材料が小麦粉から(より安い)トウモロコシ粉に勝手に変えられたりもする。このように横流しが頻繁に起きている」(支援物資の配給担当者)

人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

前出の情報筋はまた、このようなエピソードを紹介した。

今年の夏、ある国際支援団体が羅先(ラソン)市の先鋒(ソンボン)地区の全世帯を対象に小麦粉25キロを配給するため、ロシアから数百トンの小麦粉を輸入したが、朝鮮労働党の羅先市委員会はなぜか配給を2カ月間も行わなかった。最近になってようやく行われたが、世帯当たり25キロあったはずの小麦粉は5キロに減っていたという。

また、このような話もある。

国連の世界食糧計画(WFP)は、栄養強化ビスケットを北朝鮮国内で製造し、栄養失調にかかった子どもに配給するプロジェクトを行っているが、工場の担当者がWFPから受け取った材料のうち、牛乳、卵、砂糖を横流しして、小麦粉だけで製造したり、完成品を市場に横流ししたりしている。

また、当局が本来の対象外の兵士に対してこのビスケットを配給しようとしたところ、上官は休暇中や脱走した兵士の分を市場に横流ししてしまった。また、発電所建設労働者に配給されたりもした。

このように、横流しは旧共産圏諸国のように、北朝鮮の国のシステムないしは習慣として根付いてしまっている。その根底には、いくら働いても極端に少ない額の給料しかもらえないという問題があるが、たとえその問題が解決したとしても、横流しの悪弊を根絶するのは難しいだろう。

「1990年代中盤からわが国(北朝鮮)は30年以上、外部の人道支援で食糧問題を解決してきた。表向きは『チュチェ(主体)朝鮮の尊厳と国威を全世界に轟かせている』などと宣伝しているが、裏では自然災害を口実に物乞いを続けている」(情報筋)

(参考記事:「街は生気を失い、人々はゾンビのように徘徊した」…北朝鮮「大量餓死」の記憶