韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は10日に行われた国会の国政監査で、北朝鮮への独自制裁の解除検討に言及した。これをきっかけに、対北朝鮮外交を巡る米韓の亀裂が明らかになっている。
康氏の発言があった夜、トランプ米大統領は「韓国政府はわれわれの承認(approval)なしには何もしないだろう」と述べた。そして11日、国政監査で韓国政府側は「政府レベルでの検討はない」と康氏の発言を覆したものの、沈載権(シム・ジェグォン)議員が「韓国も主権国家なのにトランプ大統領の『承認』という表現は不適切だ」と話すなど、与党・共に民主党からはトランプ氏に対する批判の声が上がった。
一方、野党・自由韓国党の金武星(キム・ムソン)議員は「米国に背を向けて北朝鮮の立場をあまりにも多く代弁している文在寅政権への警告を込めた発言と解釈するのが合理的」と主張した。
こうした亀裂は、いずれ明らかになることだった。米国と韓国では、見据えている目標が違う。トランプ氏は、とりあえず北朝鮮の非核化さえ実現できればオーケーだが、文在寅政権は自分たち韓国の左派主導で、統一への三つ筋をつけることを夢見ている。
筆者に言わせれば、米韓のいずれにも身勝手な部分があり、北朝鮮の金正恩党委員長に翻弄されている部分がある。最も嘆かわしいのは、自由民主主義を守るという意志の欠如だ。トランプ政権は今年の初めまで、北朝鮮の人権侵害を激しく非難しながら、今では何も言わない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面文在寅氏に至っては、就任以来、きちんと言及しことはないものと記憶している。最近では会う度に笑顔で抱擁を交わす金正恩氏が、裏では韓流ドラマを見ただけの自国民に残酷な抑圧を加えているのを知りながらだ。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは… )つまり米韓はそれぞれ、単に自国の国益確保に走っているだけなのだ。金正恩氏にとって、こんなに都合のよい話はない。金正恩氏は今後ますます、「わが民族同士」を合言葉に、韓国に対して「しっかりしろ」とけしかけるだろう。米韓の意見対立が韓国世論のナショナリズムに火を付ければ、年内に予定されている訪韓時に、金正恩氏は熱烈な歓迎を受けるかもしれない。そこまでいったら韓国政治は金正恩氏の意のままになりかねないし、米国から本気で見捨てられるかもしれない。
米国も、北朝鮮との対話に前のめりなのは一緒だ。金正恩氏から非核化のゴールを「トランプ氏の1期目の任期内にしよう」と提案され、そのエサに食らいついた形となっている。選挙を考えなくて済む独裁者に、民主主義の弱点を見透かされているのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面このような混乱の中に今、日本の安倍政権も飛び込もうとしている。果たしてどのようなポジションを取るのが日本にとって得策か、よく考えてみるべきだろう。