米上院外交委員会が9月26日、北朝鮮国内の政治犯収容所の撤廃を求める決議案を通過させたことは、すでに本欄でも言及した。同決議案は、ユタ州選出のオリン・ハッチ議員(共和党)が4月に提出したもので、金正恩党委員長に対し、収容所に囚われているすべての収監者の釈放も求めている。

(参考記事:北朝鮮女性、性的被害の生々しい証言「ひと月に5~6回も襲われた」

これに、北朝鮮メディアが噛みついた。北朝鮮の対外宣伝メディアである「メアリ」は5日、「朝米関係の足踏みには原因がある」と題した記事で「米議会上院外交委員会は対朝鮮制裁と反共和国謀略策動をいっそう悪辣に繰り広げるための対朝鮮敵視法案を作り上げた」と反発した。

また対南宣伝ウェブサイトの「わが民族同士」も同日、「(米上院の)対朝鮮敵視法案は、わが共和国に対する謀略と病的拒否感に基づく完全な言いがかりであり、強盗的な文書だ」「朝米関係改善に冷や水を浴びせる故意的な挑発行為であり、トランプ政権の動きにブレーキをかけ、朝米関係を対決と戦争の局面に逆転させようという不純な企図が込められている」と非難した。

一連の記事はまず間違いなく、金正恩党委員長の直接の指示で掲載されたものだ。金正恩氏は国際社会から人権問題で非難されることを最も嫌っており、米国から制裁指定された際にはブチ切れて荒れまくったという。

現在、曲折を経ながらも北朝鮮と米国の対話が続いているのは、トランプ大統領が北朝鮮の人権問題に言及していないからだ。同氏は今年の初めには、「脱北女性の人身売買をなくして見せる」と言っていたにもかかわらず、今では北朝鮮に対し、人権の「じ」の字も口にしない。

だが、米国の議会は別だ。北朝鮮と直接対話するわけではない議員たちは、「ところで人権侵害の問題はどうなってるんだ?」と無慈悲にツッコミを入れる。

金正恩氏が恐れているのはおそらく、11月の米中間選挙でこの問題に注目が集まり、「人権を無視して北朝鮮と対話しても良いのか」という世論が巻き起こることだろう。そうなったら、仮に非核化に対する金正恩氏の意思が本物であっても、対話はとん挫せざるを得ない。

米議会のツッコミは、金正恩氏の弱点を確実に突いたと言える。こうした展開は今回の動きだけで止むものではなく、今後も様々な局面で見られることだろう。