韓流ドラマをはじめとする韓国製品の販売・所有を厳禁してきた北朝鮮で、規制緩和の兆候が見られると、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。市場では現在、歯磨き粉、古着、薬などの韓国製品が売られている。薬を例に挙げると、ペニシリンの代用として使われるアモキシシリン、ビタミン剤、風邪薬などがあるが、特に風邪薬がよく効くと人気だとのことだ。

当局の締め付けが緩くなったと言っても、まったく規制がなくなったわけではない。あくまで販売や所有は禁止されているし、摘発も随時行われている。

しかしどうやら、何が何でも韓国製品の拡散を阻み、違反者にとんでもない厳罰を科してきた過去の様子とは、だいぶ違ってきているようだ。2016年1月には、23歳の女子大生が韓流ドラマを見たというだけで拷問され、悲惨な運命を辿る事件があった。

(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…

金王朝の「恥部」を暴露

ではなぜ、ここへ来て当局の規制が緩くなっているのだろうか。情報筋は、「南北関係が良い方向に向かっているからではないか」と見ている。

一方、これとは別に、これまで摘発に来た役人に食ってかかって反発していた商人たちの抵抗が、当局に態度を改めさせたのだという見方もある。また、国際社会からの経済制裁が続く中、あまり締め付けを厳しくすると国民が飢えてしまうということに、当局が気付いたのだという指摘も聞こえる。

しかしここは敢えて、南北関係との関連を考えてみたい。今や韓国の文在寅政権と北朝鮮の金正恩体制は「蜜月」と表現できるほどに接近した。韓国国民も、概ねこれを歓迎している。そんな雰囲気の中、金正恩党委員長はいつまで、全面的な「韓国禁止」を続けられるだろうか。少なくとも、韓流ドラマを見ただけの女子大生を拷問するようなことは続けられまい。

すでに南北の芸術団交流の中で、韓流アイドルの「平壌公演」も実現している。たとえば現代の政治経済とは関係の薄い、韓流ドラマの時代劇であれば、金正恩氏も国内での放映に踏み切る余地があるのではないか。

だがそれでも、特に情報の分野だけは、金正恩氏はいつまで経っても解禁に踏み切れないだろう。韓国には、金王朝の「恥部」を暴露した情報があふれているからだ。

北朝鮮国民も、自国権力層の腐敗には気づいている。それでも、その実態を詳細に描いた書籍や映像作品に触れたときの衝撃は、相当なものがあるはずだ。もしかしたらそれこそが、金正恩氏が南北対話を進める上で生じる、彼にとっての最大のリスクかもしれない。

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