「落書きしまくり」で公開処刑…金正恩氏はソウルの罵声に耐えられるか

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韓国の文在寅大統領の訪朝に随行した文正仁(ムン・ジョンイン)統一外交安保特別補佐官は19日、平壌で行った記者会見で次のように語り、北朝鮮の金正恩党委員長が周囲の反対を押し切り、ソウル訪問を「9月平壌共同宣言」に明記したと明かした。

「党統一戦線部の主要幹部が私の隣に座り、話をしたのだが、周囲は皆、反対したということだ。しかし金正恩氏が自ら決めたため、阻止できなかったそうだ」

これまで、北朝鮮首脳は一度もソウルを訪問していない。金正日総書記は2000年に当時の金大中韓国大統領と首脳会談を行い、ソウル訪問を約束したが、遂に実現しなかった。警備上の懸念が、最後まで払拭されなかったためだ。

北朝鮮が求める警備は、最高指導者の生命の安全の保証されるだけでは十分ではない。国家の「最高尊厳」である金正恩氏の名誉が守られることも重視する。

北朝鮮は、「落書き」でさえ政治的な事件になるお国柄だ。今年3月には、国の重要施設の壁に金正恩体制を非難する落書きをしまくっていた軍の大佐が逮捕され、平壌郊外にある姜健(カン・ゴン)総合軍官学校で、自動小銃により公開銃殺される事件があった。

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こんな具合だから、金正恩氏は生まれてこの方、面と向かって罵声を浴びたことなど一度もないはずだ。もちろん、北朝鮮国民が陰で悪口を言うことぐらいはあるが、それが本人の耳に届くことは絶対にない。

ちなみに、韓国に亡命して金王朝の「恥部」を暴き、一族の名誉を貶めた金正日氏の妻の甥は、北朝鮮が放った刺客によってソウルで暗殺されている。

北朝鮮当局はここまで最高指導者の名誉を守ることに神経質なのに、金正恩氏がソウルを訪問したらどうなるか。今年2月の平昌冬季五輪に際し、北朝鮮は韓国に芸術団を派遣した。団長は、金正恩氏の側近のひとりである玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏だ。

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彼女がソウル市内で移動する際、その動線上で北朝鮮への抗議集会を開いていた保守団体のメンバーが、「イーシバルニョナー!」と罵声を浴びせるのを、現地で取材していたデイリーNKジャパンの記者が直接聞いた。この言葉の意味を日本語で解説するのははばかられるのだが、英語で言うと「ファッキンビッチ」といったところだろうか。記者によれば、罵声は本人にも聞こえていたはずだという。

ということは、金正恩氏がソウルを訪問することになれば、彼に「ケーセッキ!」とか「シバルセッキ!」などの罵声を浴びせようと待ち構える人々が間違いなくいる。いずれも、英語の「サノバビッチ」と似たような意味だ。

さらには保守派の抗議集会で、北朝鮮国旗や金正恩氏の写真を燃やす場面も見られることだろう。韓国の新聞やテレビはマスメディアの使命として、それらを報道しないわけにはいかない。

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金正恩氏を見る韓国社会の視線は、全般的にはそう険悪なわけではない。韓国当局がしっかり警備すれば、金正恩氏の身近で大騒乱が起きる可能性は低いだろう。

しかし、金正恩氏が最高指導者に就任する前のことではあるが、北朝鮮は韓国の哨戒艦を撃沈し、多数の兵士を殺害している。また延坪島(ヨンピョンド)に対する砲撃では民間人までをも殺害した。さらに韓国には、北朝鮮当局に家族を無残に殺された脱北者もいる。

犠牲者の家族や友人、その周囲の人々が、皆でにこやかに金正恩氏を迎えられるはずもないのだ。