金正恩氏が生き延びた「ギリギリのタイミング」と運命の決断

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北朝鮮は2017年9月15日、中距離弾道ミサイル「火星12」を太平洋に向けて発射したのを最後に、弾道ミサイルの試射をピタリと止めた。同年だけで中距離弾道ミサイルの「北極星2」と「火星12」、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の発射を立て続けに成功させ、8月には米グアム周辺に向けた「包囲射撃」計画をぶち上げていたにもかかわらずだ。

(参考記事:【画像】「炎に包まれる兵士」北朝鮮 、ICBM発射で死亡事故か…米メディア報道

過去のデータと対比した限りでは、この「静けさ」から北朝鮮の意思の変化を読み取ることは難しかった。米ジェームズ・マーティン不拡散研究センターのシェア・コットン研究員によれば、金正恩政権が実質的に立ち上がった2012年以降、毎年10月-12月の3カ月間は、北朝鮮のミサイル発射回数が大きく減少しているためだ。

しかしその後の展開からわかったのは、北朝鮮のミサイル試射停止は、一時的なものではなかったということだ。2018年4月、朝鮮労働党は中央委員会第7期第3回総会において、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を停止するとの決定書を採択する。

北朝鮮がミサイル試射を停止した直後の2017年10月、米トランプ政権は有事に備え、空軍に金正恩党委員長を暗殺する訓練を極秘に行わせていたとされる。この時点で米国はまだ、北朝鮮の真意を把握してはいなかったのだ。

つまり、金正恩党委員長がその後も核実験やミサイル試射を続行すれば、トランプ政権による「暗殺作戦」の発動は、現実味を帯びたかもしれない。

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では、金正恩氏はなぜ、このような絶妙なタイミングでミサイル発射を止めたのか。一義的には、弾道ミサイル技術を相当な水準まで高めることができたとの判断によるものだろう。

また、経済制裁の影響もあったかもしれない。デイリーNK取材班は2017年11月半ば、中国の吉林省を訪れた平壌市民(A氏)にインタビューし、国際社会の経済制裁がどれほど人々の生活に影響を与えているかについて聞いた。そこで垣間見えたのは、平壌市民はさほど堪えていないが、地方住民にはかなりの影響が出ているということだった。

北朝鮮の食糧事情はかつてと比べかなり改善しているが、格差の拡大により、食べ物を市場で買うための十分な現金収入を得られていない人も多い。そのような層には、経済制裁は確実にダメージを与えていた。

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そんな中で国内世論も悪化した。この年、米国が北朝鮮に対して行った様々な軍事的デモンストレーションを受けて、北朝鮮国内でも「戦争が始まるかも知れない」との危機感が漂った。

そのような諸々の状況の中で、金正恩氏は遂に、核実験とミサイル試射の停止を決断したのだ。仮に、ここで金正恩氏が判断を誤ったり、決断が遅れたりしたら情勢はどのように展開していたのだろうか。