米トランプ政権は北朝鮮との緊張が高まっていた2017年10月、有事に備え空軍に金正恩党委員長を暗殺する訓練を極秘に行わせていた――トランプ米政権の内幕を描いた『恐怖(FEAR)』では、このように暴露されている。
では具体的に、米軍はどのような方法で金正恩氏を殺そうとしていたのか。分析する上で参考になりそうなのが今年1月、軍事専門家のジェフリー・ルイス氏が米メディアのデイリー・ビーストで発表した、「北朝鮮を脅かす最も謙虚な提案」というコラムだ。同氏はこの中で、米国は金正恩氏に脅威を与えるため、同氏専用のトイレを空爆すべきだと主張している。
確かに、金正恩氏には普通の人と同じトイレを使えないツライ事情がある。
(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳)その点をうまく突くならば、金正恩氏に対するピンポイント攻撃が可能になるわけだ。
ルイス氏は、北朝鮮が公開した写真に金正恩氏専用と見られるポータブル・トイレが確認できたことから、これをピンポイントで爆撃することによって米国の攻撃能力の正確さを見せつけることができると述べている。ジョークではなく、大真面目な主張なのだ。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面さらにルイス氏は、トイレは「金正恩氏に脅威と屈辱を与える攻撃目標ではあるが、核兵器による報復に踏み切らせるような大規模攻撃とはならないターゲットだ」と主張している。
だが、これはどうだろうか。確かに、北朝鮮軍は食糧不足や軍紀のびん乱により、危機に即応できる状態ではないと思われる。
だからこそ金正恩氏は、国営メディアを通じ「米本土全域がわれわれの核打撃射程圏の中にあり、核のボタンがつねに私の事務室の机の上に置かれている」と豪語していた。自分のトイレを爆撃されながら、米国に対して反撃を行わなければ「金正恩は戦えない」――すなわち弱虫であるというレッテルを貼られかねない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面無論、米軍の考えはルイス氏の主張とは異なっていたはずだ。『恐怖』によれば、米空軍の暗殺訓練では地下施設を破壊する「バンカーバスター」が高度150メートル程度の低空から投下されたほか、別の訓練ではアフガニスタンで実際に投下した大規模爆弾が使われた。トイレを壊すのに、こんなたいそうなものは必要ない。
米軍はやはり、限られたチャンスの中で、確実に暗殺を成功させなければ、核による報復のリスクが大きいと読んでいたのではないか。
もちろん、米軍のそうした読みは金正恩氏も承知であり、万全の備えで守りを固めていた。