次から次へと死者が…北朝鮮「マンション・ブーム」の怖い話

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北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)の工事現場で先月中旬、死亡事故が発生し、複数の労働者が犠牲になった。この犠牲者が地方政府の幹部であることが判明し、現場が騒然となったと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

事故が起きたのは両江道の道庁所在地、恵山(ヘサン)市渭淵洞(ウィヨンドン)のマンション建設現場だ。大型クレーンで運んでいた鉄筋が落下し、その下敷きになった2人の労働者が死亡した。

犠牲者のうち1人が三池淵(サムジヨン)郡の朝鮮労働党の組織担当書記、つまり地方政府の幹部であることが判明し、大騒ぎになった。この書記は、党の内部事業で問題が発生した責任を問われ、2016年10月に革命化措置(下放)が下され、恵山市内での建設現場で労働者として働いていた。来月には復帰を控えていたところが、非業の死となった。

この現場では7月にも26歳の労働者キムさんが、湿気の多いマンションの内装工事を行っていた途中で感電事故で死亡している。このような死亡事故は、北朝鮮の病弊である「速度戦」、「安全対策無視」などが原因になり、多発している。

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「監督官はともかく工期に間に合わせろと要求するため、順番を無視して複数の工程が同時に行われているため、予想外の事故が多発している。郡の書記が亡くなったため注意喚起が行われたが、一般の労働者ならそんな呼びかけすらない」(情報筋)

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高級リゾート「元山葛麻(ウォンサンカルマ)海岸観光地区」の建設現場では、今年1月から7月までに7000人もの労働者が事故で死亡しているという驚くべき話がある。

また、このような事故多発のもうひとつの背景に、マンションの建設ブームがあると思われる。

恵山では2015年、市内の恵明洞(ヘミョンドン)に金日成主席、金正日総書記の銅像が建設される際に、周辺にマンションが建設されたことがきっかけとなり、建設ブームが起きた。

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銅像の北側にあり、今回の事故の現場にあった渭淵洞でも、マンション建設ブームが起きている。渭淵駅周辺にあった古ぼけた一戸建て住宅が取り壊され、新しくマンションが建設された。家の前に品物を並べて商売をしていた住民は不便を余儀なくされたが、マンションになっても商売は続いているという。

一連の建設ブームに対する市民の評判は良好のようだ。

「蓮峯洞(リョンボンドン)の(再)開発はほぼ完了段階で、マンションと育児院が建設された。渭淵洞の隣の城後洞(ソンフドン)にも体育館が建設された。学校の生徒達が悪天候時にも運動できるようになり、市民は喜んでいる。渭淵洞、松峯洞(ソンボンドン)、新興(シヌン)市場周辺にも3年前から新たに住宅が建設され、郊外の剣山里(コムサンリ)の住宅は、屋根が明るい色のものに塗り替えられた。上から見下ろせば恵山の変化を実感できるだろう」(情報筋)

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恵山は、年間数十万人が訪れる観光地・長白山(白頭山)に近く、建設ブームの裏では「みすぼらしい街並みを見せ続けるわけには行かない」という当局の心理が働いているのだろう。

一方で、開発には不満の声も根強い。両江道の情報筋は、三池淵の開発で強制撤去に遭って家を失った人たちが、ホームレスになっていると伝えた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、現地では政府の旗振りで体育村建設と数百戸の住宅建設が進められているが、資材や資金の支援はほとんどなく、地元の機関、工場、市民に丸投げされていると嘆いた。

このような場合、マンション建設を押し付けられた機関は、トンジュ(金主)と呼ばれる新興富裕層から資金を借りてくる場合が多い。トンジュはマンションの完成後、一部住居の分譲権を得て、それを転売して利ザヤを稼ぐのだ。

しかし民間の資金で住宅を建てるとなれば、利益を最大化するために、できる限り原価を切り下げようとする。そのため、規定に反して鉄筋などの資材を減らしたり、不良品を使用したりした。工事を請け負った機関の責任者も、ワイロを受け取って見て見ぬふりをするため、問題が表面化することはない。

そのような不正が行われた結果、首都・平壌では、入居の始まったマンションが突如として崩壊、500人が犠牲になるという惨事まで起きている。

北朝鮮のマンション・ブームは、まさに死と隣り合わせなのだ。