党幹部も恐怖に震える…北朝鮮「エリート学生たち」の正体

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は17日、金正恩党委員長が咸鏡北道(ハムギョンブクト)の水力発電所である漁郎川(オランチョン)発電所の建設現場を視察したと伝えた。

金正恩氏はそこで、ダム建設が開始されてから17年になるのに、総工事量の70%しか達成されていない事実を把握。内閣の担当幹部がここ数年、一度も建設現場に出てきていないとの報告を受けて「大変激怒」し、「意気込んで来てみたら、言葉も出ない」「書類いじりばかりしながら、実際的で電撃的な経済組織事業の対策を立てたものはひとつもない」などと叱責したという。

金正恩氏は3年前、視察したスッポン養殖工場の管理状態が気に食わないとして支配人を処刑。その視察時の動画を公開したことがある。叱責された建設現場の幹部らも、生きた心地がしなかっただろう。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

金正恩氏は続けて、「内閣をはじめとする経済指導機関の幹部もダメだが、党中央委員会経済部と組織指導部の担当課にも問題がある」として、北朝鮮の政治経済のコントロールタワーである党の各部門に対しても不満を露わにした。

これで足元に火が付いたのが、北朝鮮の政務と人事を一手に掌握するとされる朝鮮労働党組織指導部である。咸鏡北道のデイリーNK内部情報筋によれば、組織指導部は道党、道保衛部(秘密警察)、道保安署(警察)、道人民委員会(道庁)に大規模な検閲団を送り、重箱の隅を楊枝でほじくるようにして調査を行っているという。

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この検閲団だが、主に金日成高級党学校と人民経済大学の学生たちで構成されているという。なぜ学生なのか。

学生と言っても、10代や20代の若者ではなく、実は皆が中堅幹部なのだ。今後、さらなる昇進の見込まれるエリートたちが、思想や行政・経済の知識に磨きをかけるべく、専門校で教育を受けているのである。

将来は大幹部になろうと野心を燃やしている面々だけに、調査の手は厳しい。ここで不正を発見すれば、金星にもなる。調査の手を見守る道の幹部たちは、ヤキモキしているに違いない。

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ちなみに、検閲団が探しているのは、「非社会主義行為」と「非理(汚職)」だ。

非社会主義行為とは、文字通り北朝鮮が標榜する社会主義の気風を乱すあらゆる行為を指す。たとえば賭博、売買春、違法薬物の密売や乱用、韓国など外国のドラマ・映画・音楽の視聴、ヤミ金融、宗教を含む迷信などなどだ。もちろん、その他の刑事事犯も含まれる。

しかし実際のところ、北朝鮮には社会主義の気風などほとんど残っていない。1990年代に計画経済と配給システムが崩壊したために、その後はなし崩し的に市場経済化が進行。その過程で、売買春や薬物の乱用が、資本主義国も真っ青な勢いで蔓延した。

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そして、そのような社会悪の蔓延に乗っかる形で金儲けに走ったのが、党や行政機関の官僚たちなのである。

つまり、党や行政機関をほじくり返せば、「非社会主義行為」も「非理」もいくらでも出てくるということだ。検閲団の調査が終わったとき、咸鏡北道では果たして、どれほどの粛清の嵐が吹き荒れるのだろうか。