米ワシントン・ポストによると、日本と北朝鮮は7月中旬、ベトナムで秘密接触を持った。ここに参加したのは日本側が安倍晋三首相の側近の北村滋・内閣情報官で、北朝鮮側は朝鮮労働党統一戦線部のキム・ソンヘ統一戦略室長だとされる。

朝日新聞が韓国政府関係者の話として伝えたところでは、キム・ソンへ氏は「2015年夏に南北の軍事境界線近くで起きた木箱地雷爆発事件で事態の収拾にあたった」という。事実ならば、同氏はかなりの修羅場をくぐったことになる。韓国京畿道(キョンギド)の非武装地帯(DMZ)内で同年8月4日、韓国軍の20代の下士官2人が地雷に接触。身体の一部を吹き飛ばされる事故が起きた。後に、この場面の映像も公開されている。

(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

この件を巡り、韓国国防部は同月10日、爆発物の残骸を分析した結果、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の対人地雷と一致したことを発表。また、在韓国国連軍司令部の指示で設置された調査チームも、地雷が仕掛けられたのは最近であり、洪水などで北朝鮮側から流れ着いたり、過去に埋められたりした地雷が爆発した可能性はないと明らかにした。

これをきっかけに、北朝鮮と韓国は軍事的対立のエスカレーションにはまり込む。韓国軍が報復として拡声器による宣伝放送(心理戦)を11年ぶりに再開すると、北朝鮮が「準戦時状態」に突入。南北が砲火を交える事態に発展した。

実は、軍事境界線の韓国側で暮らす住民らの間では、この事件が近年で最も「危ない場面だった」と言われている。このときは北朝鮮との軍事衝突に備えて防空壕に退避させられた住民らもいたが、北朝鮮とトランプ政権の間で緊張が高まった昨年にも、そのようなことはなかったのだ。

朝鮮半島ではこのように、大小さまざまな「戦争の火種」が日々くすぶってきた。昨年11月、北朝鮮兵士が板門店(パンムンジョム)を駆け抜けて韓国へ亡命した事件も、一歩間違えれば軍事衝突につながりかねなかった。

ちなみにDMZでは近年、北朝鮮兵士が徒歩で南側に入り、亡命するなどの出来事が相次いでいる。兵士らが飢えや虐待に苦しむ北朝鮮軍の軍紀びん乱は周知のとおりだが、韓国軍の警備のいい加減さもまた、戦争のリスクを生む要素だと言えた。

2015年の8月には、キム・ソンへ氏の現在の上司に当たる金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長(当時は偵察総局長)も、一時的に姿を消していた。地下に潜り、韓国との衝突に備えていたと見て間違いない。

このような緊張感の中でもまれてきた北朝鮮の幹部らが、外交においても手ごわい相手であるのは言うまでもない。

7月の日朝接触が今後の展開につながるのか、つながらないのかはまだ読めないが、いずれにしても、日本が厳しい外交戦を強いられるのは間違いないだろう。