北朝鮮国営の朝鮮中央通信は21日、金正恩党委員長が妙香山医療器具工場を視察し、担当幹部らを厳しく叱責したことを伝えた。

金正恩氏はこの日、「ここ数年の間に飛躍的に伸びた他の部門に比べ、保健医療部門は全く動かず、何の努力もしないのでますます立ち後れている」との現状認識を示した。これは、確かにそうだ。北朝鮮の医療は「立ち後れている」というより、ほとんど崩壊状態にある。ある脱北者によると「たとえ伝染病が発生しても、北朝鮮当局にできることと言えば『生水を飲まず、沸騰させてから飲むように』と国民に知らせることぐらい」だという。

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しかし、医療の立て直しには政治的にも財政的にも、国家的な取り組みが必要になる。近年の停滞の大きな原因として、金正恩氏が主導した核兵器開発の影響があるのは言うまでもない。

そんなことはお構いなしに、金正恩氏は保健省などの担当幹部らを次のように言ってなじった。

「保健部門全般(の幹部たち)は、冬眠が長すぎる。冬眠する動物だって1年に1度、冬の眠りにつくだけなのに、保健部門は何年にもわたって冬眠をむさぼり、空しいスローガンだけを叫んでいる」

金正恩氏の「毒舌ぶり」が、北朝鮮メディアでここまで詳しく公開されるのは珍しい。北朝鮮メディアが、最高指導者の発言を脚色することはない。金正恩氏はこのとおりの発言をしたか、あるいはもっと激しい表現を使ったのだろう。

筆者は常々、北朝鮮のメディア戦略は金正恩氏が直接指揮していると指摘してきた。そうでなければ、同氏の「ヘンな写真」までもが次々に公開されるはずはないからだ。ということは、北朝鮮メディアが日本や米国に対して投げつけてきた数々の暴言も、やはり出所は金正恩氏だったのだろうか。

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いずれにせよ、北朝鮮において「全能の独裁者」である金正恩氏は、何でも言いたい放題だ。反論する幹部など、もはやいない。玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)元人民武力部長などは、ほんの少し口答えをしただけで、文字通り「ミンチ」にされて殺されてしまったと言われる。

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だが、幹部たちは金正恩氏から言われっぱなしでも、庶民は必ずしもそうではない。あるいは、金正恩氏よりはるかに高度なブラックユーモアで、最高指導者を揶揄しているのだ。

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