「単なる物見遊山じゃないの!?」金正恩氏の指導を庶民が疑問視

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は先月17日、金正恩党委員長が咸鏡北道(ハムギョンブクト)にある複数の施設を訪れ、現地指導を行ったと大々的に報じた。

その場では、工事の遅れや管理不備に対して、金正恩氏が幹部を厳しく叱責したことも伝えているが、「人民のことを気にかけている指導者像」を打ち出す目的があるものと思われる。金正恩氏は3年前、スッポン養殖工場の支配人を処刑した「前科」もあり、叱責された幹部は生きた心地がしないだろう。

この現地視察の記事を見た咸鏡北道の地元民からは、強い不満の声が上がっているとのことだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋が、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に、「行ったのは軍需施設ばかりなのに、あたかも人民生活のための現地指導であるかのように宣伝している」というのが怒りの理由だという。

金正恩氏が訪れた洛山(ラクサン)海上サケ養魚事業所と石幕(ソンマク)タイセイヨウサケ種魚場の近隣住民からはこんな声が聞かれるという。

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「両方とも、民間人が接近できない軍の施設じゃないか」 「養魚場と種魚場は武装した兵士が厳重な警備を敷いていて、兵士とその家族以外は数百メートル以内での接近ができなかった」 「人民生活のためだと言うなら、なぜあんなに厳重な警備をするのか」

住民は、名前は養魚場、種魚場だが、実際は軍事施設もしくは特殊実験のための養魚場なのだろうと考えている。

金正恩氏は、現地視察の際に厳重な警戒態勢を敷くことで知られている。そこには、金正恩氏が一般人と同じトイレを使えないなどの事情もある。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

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金正恩氏が最近訪れた他の施設についても、軍需工場が多いとの声が上がっている。

例えば清津(チョンジン)造船所は、潜水艦と魚雷艇を制作していると言われている。それ以外の部門は、資金と設備の不足で操業できなくなり、従業員は国が進める建設工事の現場に動員されている。

また羅南(ラナム)炭鉱機械工場も、もともとは炭鉱で使う採炭機を制作していたが、1990年台に軍需工場に変えられ、砲弾や手榴弾を作っているとのことだ。

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咸鏡北道の別の情報筋によると、現地住民から金正恩氏の現地指導に対して不満の声が上がるのには別の理由があるという。

「中国人が投資し、運営している合弁企業をあたかも純粋な北朝鮮の工場であるかのようにごまかして宣伝している」ことが気に食わないのだという。

例えば、清津化学繊維工場を取り壊して2015年に建てられた清津かばん工場は、中国資本が資材、設備、技術に加え、従業員の月給300元(約4900円)まで提供しており、100%中国企業だという。

「物見遊山で来たわけでもないだろうに、何のための現地指導なのか」(現地住民)

地元民は、労働新聞が虚偽の記事を掲載しているのを見て呆れると同時に、金正恩氏来訪の真の目的は、本当に物見遊山だったのではないかと疑っているという。