すでに本欄で紹介済みだが、2016年に脱北して韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使がこのほど、個人ブログ「南北同行フォーラム」を開設した。自身の講演やコラムを紹介するもので、ハングルのほか英語版と中国語版もある。

ブログにはたとえば、「張成沢(チャン・ソンテク)粛清事件が北朝鮮社会に及ぼした影響」というコラムが掲載されている。張成沢氏は2013年12月に処刑された、金正恩党委員長の叔父である。

内容は概ね、同氏の著書『3階書記室の暗号 太永浩の証言』(原題)に収められたのと同様のものだが、書籍にはない何枚かの写真がブログには掲載されている。その中に、カンヌ映画祭でも上映された、ある北朝鮮映画の主演女優の写真がある。

張成沢氏に連座させられ、粛清された人々の数は1万人に上るという。そこには、張成沢氏の愛人だったとされる元トップ女優も含まれていた。

その女優とは、一時は北朝鮮の銀幕スターだったキム・ヘギョンのことだ。

(参考記事:【写真】女優 キム・ヘギョン――その非業の生涯

彼女の悲惨な運命については、脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表も詳しくレポートしており、粛清情報は太永浩氏の証言と一致する。

また、張成沢氏の粛清に際しては、彼につながる外交官たちも粛清された。その中に、前駐スウェーデン大使のパク・クァンチョルがいる。彼の息子の嫁は、2007年にカンヌ映画祭でも上映された北朝鮮映画『ある女学生の日記』に主演した女優パク・ミヒャンだ。

太永浩氏によれば、彼女は夫や幼い息子とともに、政治犯収容所に送られてしまったという。

この映画は、金正恩氏の父・金正日総書記が制作方針を細かく指導したとされ、2006年8月の公開当時、朝鮮労働党機関紙の労働新聞にも取り上げられた重要なプロパガンダ映画だ。そんな映画の主演女優までが、容赦なく粛清されてしまったのだ。

そんなことをすれば、国際社会にどのようなインパクトを与えるか、金正恩氏も少し考えればわかるはずだ。それをものともしない彼のキャラクターは、ある意味で父親を上回る、生まれついての独裁者と言えるのかもしれない。