「上官はずっとボクをさわり続けた」北朝鮮軍で同性間の性暴力が横行

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韓国では先月、軍幹部の部下の女性兵士に対する性的な嫌がらせが立て続けに3件も明らかになり、物議を醸した。この問題を巡っては、米国防総省も4月30日、米軍内で起きた性的な嫌がらせや暴行に関する報告書を発表している。2017会計年度(2016年10月~17年9月)の被害申告は、前年度比約10%増の6769件だったという。

北朝鮮においても同様に、深刻な実態があることは、これまでも本欄で指摘してきた。そして、こうした性暴力の被害者は女性に限定されない。男性兵士もまた、被害に遭っているのだ。

北朝鮮の軍内では、「マダラス」や「書類整理」などと呼ばれる女性を対象にした性的虐待が横行している。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

一方、軍出身のある脱北者(男性)は、韓国のNGOである北朝鮮人権情報センターの調査に対し、次のように証言している。

「どの部隊でもあることだと思います。社会(部隊の外)に出て(女性と)会うこともできるけど、(バレたら朝鮮労働党への)入党に問題が生じるから、(一部の軍人は)最初からそういうことを考えないんです。私も兵隊になったばかりのとき、(同性からの性的暴力を)経験しました。副小隊長が、ボクが可愛いと言って、僕の性器をずっとさわっていたのです」

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北朝鮮にも、もちろん性的マイノリティはいる。

たとえば昨年には、「北朝鮮のゲイ軍人」と題された画像が世界中のネットで話題を集めた。軍事境界線の韓国側に設置された監視カメラがとらえた動画をキャプチャーした複数枚の画像で、朝鮮人民軍の2人の男性兵士が、抱き合ったりキスをしたり、かと思えば一方がもう1人の求愛をはねつけるような仕草を見せている。

これが本当に同性愛によるものかどうかは確かではないが、北朝鮮の兵役は10年以上にもなるため、厳しい軍紀に縛られた期間中に同性同士で「親密な関係」になることは珍しくないようだ。

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だが、上記の脱北者の証言は、これとはまったく異なる問題だろう。NKDBのアン・ヒョンミン研究員は以前、デイリーNKに対し、次のように語っている。

「北朝鮮軍の中での性暴力は、基本的に階級の上下関係に影響を受けている。女性兵士は入党のため、上官から暴行されても泣き寝入りするしかなく、男性の場合は日常的に性的嫌がらせが起きている」

つまりは閉鎖的空間の内部における権力の暴走が、こうした問題につながっているということだ。

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北朝鮮のケースが深刻なのは、徴兵制により多くの若者が軍隊に吸い上げられ、長期にわたりこのような環境に置かれるということだ。もしかしたら、若いうちにこのような形で権威に服従させられた経験が、北朝鮮国民のメンタルに影響を与え、抑圧的な金正恩体制の延命を助けることにつながっているのではないだろうか。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記