金正恩氏の「恐怖写真」現場にセメント大量搬入の理由

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信は7月31日、中国との国境地域にある両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)郡に、同国の鉄道運輸部門が建設資材を大量に搬入していると伝えた。「7月の1カ月間だけでも数万トンのセメントをはじめ多くの建設資材を集中輸送した」という。

朝鮮労働党機関紙の労働新聞は10日、金正恩党委員長が三池淵郡の各所を視察したことを大きく報じた。それによると、金正恩氏は教育・住宅・産業・スポーツなど複数の区画整備が進行中の建設現場を視察。「現代文明が凝縮された山間都市の典型を創造し、その経験を一般化してわが国の山間地帯の全ての郡の面ぼうを一新させよ」と述べたという。

建設資材の大量輸送は、金正恩氏のこのような指示を受けてのものだろう。だが、北朝鮮ではムリな工期のゴリ押しにより、深刻な事故が多発している。

実際、金正恩氏の視察のニュースとともに北朝鮮メディアが公開した建設現場の写真を見た建築専門家の間からは、重大な事故が発生する可能性が指摘されている。

(参考記事:金正恩氏の背後に「死亡事故を予感」させる恐怖写真

確かに専門家の指摘するとおり、写真に収められた建設現場は、十分な安全対策がほどこされているようにはとても見えない。

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過去には1989年4月、高速道路の建設現場で、建設途中の橋が崩落する事故が発生した。この時、現場にいた500人が120メートル下の川原に落下。後に韓国へ逃れた目撃者たちの証言によれば、川原には原形をとどめない死体が散乱し、救助の看護師たちが気を失うほどの地獄絵図と化したという。

一方、デイリーNK内部情報筋によると、道内の恵山(ヘサン)近郊で先月、大量の建設物資を積んで三池淵(サムジヨン)に向かっていた貨物列車が転覆する事故が発生。多数の負傷者が出たという。

事故の原因はわかっていないが、資材搬入を急ぐ余り、積載量が過大となっていた可能性がある。北朝鮮の鉄道は施設の老朽化が激しく、各地で事故が多発している。

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三池淵郡への資材の搬入が終われば、次は軍の兵士をはじめとする大量の人員が投入され、人海戦術による突貫工事が進められるだろう。本当の悲劇が幕を開けるのは、そのときかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

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