やっぱり事故が起きていた金正恩氏「恐怖写真」の現場

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信や朝鮮労働党機関紙の労働新聞は10日、金正恩党委員長が中国との国境地域にある両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)郡の建設現場など各所を視察したことを大きく報じた。

その際に公開された写真を見た建築専門家の間からは、重大な事故が発生する可能性が指摘されている。

(参考記事:金正恩氏の背後に「死亡事故を予感」させる恐怖写真

そして「やはり」と言うべきか、この現場近くで深刻な事故が発生していたことがわかった。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、道内の恵山(ヘサン)近郊で、大量の建設物資を積んで三池淵(サムジヨン)に向かっていた貨物列車が転覆した。

この事故で、貨物列車に乗っていた荷主4人が負傷し、意識不明の状態で病院に搬送された。北朝鮮のこうした列車は、貨物1両あたり2人の係員が乗ることになっており、移動手段として商人が乗り込むこともあるため、負傷者はさらに多い可能性があると情報筋は伝えた。

「ソビ車(個人経営のトラック、バス)よりも安く移動しようという商人が、車掌にワイロを渡して貨物列車に乗ることもある」(情報筋)

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事故の原因はわかっていないが、現地では「レールを枕木に固定する犬釘を誰かが抜いたせいではないか」との見方が持ち上がっている。当局が反国家行為だとして捜査に乗り出したとの噂も出回っている。つまり、体制に反発する一種のテロ行為ではないかと疑っているわけだ。

一方、この路線は最近完成したばかりで、路盤が十分に固められておらず、崩壊したのが原因ではないかと見ている人もいる。北朝鮮では「速度戦」の名の下に、無理な工期のごり押しによる手抜き工事が横行。また、安全設備がないことがほとんどで、死亡事故が頻発している。

例えば1989年4月、高速道路の建設現場で、建設途中の橋が崩落する事故が発生した。この時、現場にいた500人が120メートル下の川原に落下。後に韓国へ逃れた目撃者たちの証言によれば、川原には原形をとどめない死体が散乱し、救助の看護師たちが気を失うほどの地獄絵図と化したという。

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そうでなくとも、北朝鮮の鉄道は施設の老朽化が激しく、各地で事故が多発している。

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)では1997年、停車中だった火薬25トンを積んだ貨物列車5両が火災を起こし、大爆発を起こした。到着した通勤列車が巻き込まれ、3000人が死亡し、1万人が負傷したといわれている。

この分だと、問題の写真を見た建築専門家の懸念が現実のものとなってしまう可能性も小さくはない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記