北朝鮮の金正恩党委員長が建設を推し進め、最近完成したばかりの白頭山観光鉄道で転覆事故が発生し、多くの負傷者が発生した。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、道内の恵山(ヘサン)近郊で、大量の建設物資を積んで三池淵(サムジヨン)に向かっていた貨物列車が転覆した。

この事故で、貨物列車に乗っていた荷主4人が負傷し、意識不明の状態で病院に搬送された。北朝鮮のこうした列車は、貨物1両あたり2人の係員が乗ることになっており、移動手段として商人が乗り込むこともあるため、負傷者はさらに多い可能性があると情報筋は伝えた。

「ソビ車(個人経営のトラック、バス)よりも安く移動しようという商人が、車掌にワイロを渡して貨物列車に乗ることもある」(情報筋)

近隣住民は「旅客列車だったらどれほど死人が出ただろうか」「貨物列車だったのは不幸中の幸い」などと語っている。

当局は事態の収拾に乗り出したが、負傷者のことはそっちのけで、事故で破損した資材のことばかり気にしている。

「人の命よりも、資材が壊れたことを気にしている、近隣住民を動員して資材の回収に没頭している」(情報筋)

この列車は、革命の聖地として知られる三池淵の現代化工事で使われる建築資材を大量に積んでいた。金正恩党委員長は先日、現地を訪れ視察を行うなど、並々ならぬ歓心を注いでいる。そんなところで問題が生じれば、現地当局の幹部のクビが飛ぶ。資材ばかりが気になるわけだ。

(参考記事:金正恩氏「革命の聖地」三池淵郡を集中視察

事故の原因はわかっていないが、現地では「レールを枕木に固定する犬釘を誰かが抜いたせいではないか」との見方が持ち上がっている。当局が反国家行為だとして捜査に乗り出したとの噂も出回っている。つまり、体制に反発する一種のテロ行為ではないかと疑っているわけだ。

一方、この路線は最近完成したばかりで、路盤が崩壊したのが原因ではないかと見ている人もいる。ちなみに路盤が弱いせいで、今のところ貨物列車しか運行されていないとのことだ。

北朝鮮の鉄道は施設の老朽化が激しく、各地で事故が多発している。

(参考記事:列車の正面衝突に谷底墜落…金正恩氏も「ひどい」と嘆く北朝鮮の交通事情

咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)では1979年、停車中だった火薬25トンを積んだ貨物列車5両が火災を起こし、大爆発を起こした。到着した通勤列車が巻き込まれ、3000人が死亡し、1万人が負傷したといわれている。

(参考記事:通勤列車が吹き飛び3000人死亡…北朝鮮「大規模爆発」事故の地獄絵図

また1989年4月、高速道路の建設現場で、建設途中の橋が崩落する事故が発生した。この時、現場にいた500人が120メートル下の川原に落下。後に韓国へ逃れた目撃者たちの証言によれば、川原には原形をとどめない死体が散乱し、救助の看護師たちが気を失うほどの地獄絵図と化したという。

(参考記事:【再現ルポ】北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図