事故が起きたわけでもケンカが起きたわけでもない。食べ物がなくて餓死したのだ。
事件が起きたのは、軍事境界線に程近い江原道(カンウォンド)の安辺(アンビョン)から東海岸沿いを北部に向かっていた列車の車内だ。現地のデイリーNK内部情報筋によると、元兵士は兵役を終えて咸鏡北道(ハムギョンブクト)の吉州(キルチュ)の故郷に向かっていた。
軍部隊では通常、除隊(兵役満了)して故郷に帰る元兵士に3食分の弁当を持たせる。北朝鮮国内ではどこで列車に乗っても、目的地に24時間以内に到着するからだ。しかし、これはあくまで列車がダイヤ通りに走った場合の話だ。列車が大幅に遅れたため、元兵士の手元には一切の食べ物がない状態となってしまった。
ところがこの彼、引っ込み思案で他人に食べ物を恵んで欲しいとの一言が言い出せなかった。