「首脳会談をやっても統一は難しいでしょ」北朝鮮国民から様々な声

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北朝鮮国営の朝鮮中央通信と朝鮮労働党機関紙の労働新聞は28日、前日に板門店(パンムンジョム)で行われた南北首脳会談を大きく報道した。また会談当日の早朝には、金正恩党委員長が韓国の文在寅大統領と会談するため、平壌を出発した旨が報道された。

これを受け、北朝鮮の庶民も韓国との交流拡大、そして南北統一について公然と語るようになっている。

中朝国境地帯の両江道(リャンガンド)に住む情報筋は27日、デイリーNK編集部の電話取材に応じ、「今日は金正恩国務委員長と韓国の大統領が対面する歴史的な日になる、と話題にする人が多い。特に先代の首領様たち(金日成主席、金正日総書記)が一度も踏むことのできなかった南の地に、いよいよ最高指導者が行くことになったという点で、南との関係改善への期待が高まっている」と話した。

北朝鮮では、最高指導者が参加する行事は「1号行事」と呼ばれ、警護のため時間や場所は最高幹部にのみ伝えられてきた。今回、金正恩氏が出発した事実と目的地が早々と公開されたのは、きわめて異例のことと言える。

情報筋も「事前に会談の予定を公開したくらいだから、大人から子供まで皆が南北関係の改善を信じている」と説明した。

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もっとも情報筋によれば、ほとんどの北朝鮮国民は、朝鮮労働党が行う講演や政治学習の内容を見ながら、あるいは金正恩氏の中国訪問などの動静を見ながら、南北首脳会談が行われるであろうことに感づいていたという。

会談前にデイリーNKが電話インタビューした平壌市民も、「韓国の大統領が平壌に来るんでしょ」と情報にズレはありながらも、首脳会談が行われること自体は知っていた。もっともこの平壌市民は、「首脳会談をしても統一は難しんじゃない」と、クールな分析をしているのだが。

しかしいずれにせよ、北朝鮮国内では今後、韓国との関係改善や統一への期待が公然と語られるようになる。以前、韓国との関係が険悪なときにそんな話をすれば、秘密警察に目を付けられることになりかねなかったが、ひとまずそうした心配はなくなった。

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北朝鮮国民の肉声はなかなか伝わってこないが、かの国にも、人々が心に秘めた、あるいは親しい人々の間で囁き合われる世論がある。

(参考記事:金正恩センスの制服「ダサ過ぎ、人間の価値下げる」と北朝鮮の高校生

そうした声が徐々に大きくなって力を持ち、北朝鮮の国そのものを変えていくことに期待したい。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記