「結局はカネ目当てか」北朝鮮国民、金正恩氏の命令に反発

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北朝鮮当局が推し進めている「非社会主義現象」に対する取り締まりキャンペーンについて、デイリーNKは先月末、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の内部情報筋の話として、国家保衛省(秘密警察)が3月初めから新たな取り締まり組織を立ち上げ、全国に「非社会主義現象を根絶やしにし、摘発時には厳罰に処す」といった内容の布告を貼り出した上で、大々的な取り締まりを行っていると報じた。

取り締まりは、昨年末の朝鮮労働党第5回細胞委員長大会で、金正恩党委員長が「非社会主義現象の根絶」を宣言したことを受けて始まった。

この布告の全文を、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は咸鏡北道の別の情報筋を通じて入手、公開した。その内容は次のようなものだ。

布告

反社会主義、非社会主義的行為を行う者どもを厳格に処罰することについて

1.尊厳高きわれわれ式社会主義制度を侵害する行為を絶対にするな。

2.社会主義のイメージを乱す行為を絶対にするな。

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3.社会主義の経済制度を侵害する行為を絶対にするな。

4.反社会主義、非社会主義的行為を徹底して根絶やしにするための殲滅戦に皆が立ち上がれ。

5.反社会主義、非社会主義的行為を行った者どもは適時に法機関に自首、自白せよ。

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6.法機関と監督統制機関は、反社会主義、非社会主義的行為を行った者どもを厳格に処罰する。

7.この布告を破った公民は職位、所属、功労に関係なく取り締まり逮捕し、法的に厳格に処理し、犯罪及び違法行為に利用されたカネ、設備、物資は没収して、奉仕機関は営業を中止させる。

8.この布告は共和国領域内のすべての機関、企業所、団体(貿易、軍需、特殊団体を含む)と公民に適用される。

朝鮮民主主義人民共和国人民保安省

チュチェ107(2018)年3月19日

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情報筋によると、「社会主義を侵害する行為」とは、韓流など海外の映像を見たり広めたりする行為、外国からのニュースを広める行為を指す。

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また「社会主義のイメージを乱す行為」は、西洋風の服装、ヘアスタイル、ダンス、歌など「われわれ式社会主義の優越性を崩す行為」のことだ。そして「社会主義経済制度を侵害する行為」は、ヤミ金や個人間の品物の売買のことを指している。

これは、一切の文化生活と経済活動をやめろと命令しているに等しい。当然のことながら北朝鮮国内では非難の声が上がっている。むちゃな布告であることに加え、取締官がワイロをせびるネタと化しているからだ。

別の情報筋によると、今までワイロをせびり取ろうにもその根拠を持っていなかった保安員(警察官)は、今回の布告をユスリのネタとして最大限に活用し、水を得た魚のように活発に動き、堂々とワイロをせしめているという。

住民は「われわれ式社会主義でどうやって生きていくのか」と強く反発し、「結局はカネ目当てではないか」と疑ってかかっている。町に貼り出された布告を破る事件が発生するなど、無理のある取り締まりに北朝鮮国内の世論は悪化している。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

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