北朝鮮メディアは最近、南北首脳会談(今月27日)と米朝首脳会談(5月~6月)を控え、米韓に対する非難を抑制する一方で、日本批判のトーンを高めている。
たとえば、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は7日、朝鮮半島を取り巻く情勢の流れから日本が取り残されているとして、そうした状況は「自ら招いたもの」だとする論評を配信した。
その論評のタイトルは「政治的『島国』の運命は自ら招いたもの」というもので、「地域の要求と大勢を知らなければ、政治的にも孤立した『独りぼっちの島国』の運命を永遠に免れないということを日本は知るべき」などとして、安倍政権を口を極めて罵倒している。
言うまでもないことだが、今この時代に「島国」か「大陸」かなどということに、どれだけ重要な意味があるだろうか。国際社会から経済封鎖を受けている北朝鮮の方が、よっぽど「独りぼっち」の境遇に近いだろう。
北朝鮮メディアの日本非難はだいたいこんな調子で、「軍国主義の亡霊」がうんぬんかんぬんというのが主なパターンだ。と思うと、たまには変わったことを言うこともある。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面同通信が3月26日に配信した論評は、こんなことを言っている。
「自分らの変態的な性的快楽を追求し、東京の都心で世界にない高齢者遊郭まで運営しながら若い男性を相手にしている国がまさに、日本である」
たぶん、いわゆる「熟年フーゾク」の類について言っているものと思われる。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面気になるのは、この記事を執筆した記者がどのようにして、日本のフーゾク業界に関する予備知識を仕入れたかだ。北朝鮮は、国民のインターネットに対するアクセスを厳しく制限しており、海外の雑誌類も国内に持ち込ませないようにしている。
もちろん、一部のエリートは海外情報へのアクセスが許されてはいる。しかしそれにしても、何のために、どんな情報を収集するかを、当局に細かく報告する必要があるはずだ。そのような手順を踏んでまで、彼らは日本のフーゾク業界について調べているのだろうか。
ちなみに金正恩党委員長は、メディア戦略を非常に重視しており、自ら指揮をとっている可能性が高い。そうでなければ、金正恩氏の「ヘンな写真」が次々と公開されるはずもない。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面金正恩氏は、自国内における売春ビジネスの蔓延に頭を悩ませているとも言われるが、実は海外のフーゾク事情についても、興味津々なのではあるまいか。
(参考記事:女子大生売春に悩む金正恩氏)高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。