「4才男児を北朝鮮から救え!」国際人権団体がキャンペーン

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国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが、中国で逮捕され北朝鮮に強制送還された脱北者の身の安全確保を目指すキャンペーンを始めた。

「韓国政府の無関心、残念」

昨年11月4日、韓国行きを目指して中国の瀋陽のアジトに潜んでいた脱北者10人が、中国公安当局に逮捕された。アムネスティは、北朝鮮に帰国させられれば重罪に処せられるとして、強制送還の中止を求める救援運動を繰り広げたが、2週間後に北朝鮮へ送り返されてしまった。

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アムネスティによると、10人のうちのク・ジョンファさん(女性)と4歳の息子は、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)の施設を経て、昨年12月3日に咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)の保衛部に勾留された。息子は、面倒を見る人がいないとの理由で20日後に帰宅させられたが、顔と手が凍傷にかかっていたという。クさんは未だに勾留され続け、栄養失調にかかっている。

判決は3月に予定されているが、「共犯」である息子とともに、「この世の地獄」とも言われる政治犯収容所に送られる可能性が非常に高い。クさんの夫で現在は韓国で暮らすイ・テウォンさんは米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に答え、妻と子どもが収容所送りになるのはほぼ確実だとして、国際社会が救援運動に力を貸してくれるよう呼びかけた。またイさんは同時に、「韓国政府がより関心を持つべき問題なのに、むしろ国際社会や外国で強い関心が寄せられていることに、複雑な思いです」とも話している。

これを受けてアムネスティは、脱北者10人の身の安全を北朝鮮当局に求めるオンライン抗議運動「ポケット・プロテスト」を23日に開始した。

女性の人身売買も

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現在勾留されている10人に適切な治療を受けさせること、公正な裁判を早急に開き、10人を釈放することを北朝鮮当局に求めるというもので、現在ネット上で賛同者を募っている。これを通じて自分の名前をSMSで送ると、アムネスティが賛同者たちの名前を記載した手紙を、朝鮮労働党の金正恩委員長ら北朝鮮当局者に送るという。

トランプ米大統領は今月2日、ホワイトハウスのオーバルオフィス(執務室)に脱北者6人を招いて北朝鮮の人権状況について意見交換した際、「脱北女性の大部分が人身売買の被害者だというが、この21世紀に考えられないことだ」として、中国政府に人身売買の根絶を強力に要求すると述べたという。

このような人身売買が横行する背景にも、脱北者を摘発し、北朝鮮に強制送還する中国の政策がある。脱北者はどのような犯罪被害に遭っても、強制送還を恐れ、当局に保護を求められないためだ。

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トランプ政権は最近、北朝鮮に対する人権侵害追及を強めているが、それはこの問題が金正恩体制の最大の弱点であると認識しているからだ。

米国や日本が1日も早く、言葉だけでなく、行動をもって北朝鮮の人権問題に取り組むことを望む。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記