中国の労働法は、学生との雇用契約は認めていない。つまり、学生のバイトやインターンは、労働法の保護の対象となる労働者とは定義されないのだ。つまりは法律の盲点をつき、労働者とは認められない女子大生を派遣して、制裁破りを行っているのだ。
さらにレストラン経営者は、中国の法定労働時間(1日8時間以下)、残業時間(通常は1日1時間、特別な事情があった場合でも3時間以下)、最低賃金(丹東市では1420元、約2万4000円)を守らなくても罰せられない可能性がある。
実際、彼女らは朝9時から夜9時半までの長時間労働を強いられているが、給料はほとんどもらえないという。現地の情報筋によると、レストランの中国人オーナーは従業員1人あたり毎月500ドル(約5万4000円)を支給しているが、そのおカネは学生ではなく大学の責任者に手渡される。彼女らは、期間満了後にわずかばかりの外貨を受け取るだけだ。
このようなインターン制度を利用した北朝鮮の制裁逃れと、それに伴う人権侵害に対して、中国政府がどのように対応するか注目される。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。