金正恩氏のお菓子セットが「不味すぎて」発展する北朝鮮の資本主義

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材料を扱う部署では小麦粉や砂糖を横流しする。生産する部署ではできたお菓子を横流しする。包装する部署では完成品を横流しする、という具合だ。労働者も幹部も、年に3回しかないビッグチャンスを最大限に活用し、お互い目をつぶり合ってせっせと横流しに励むのである。

食品工場では、お菓子が国の規定通りに作られたか品質検査を行うことになっている。しかし、厳しく検査したところで何の得にもならないことを知っている検査員は、他の部署からワイロを受け取り、形ばかりの検査を行う。かくして、子どもたちの手には本来のレシピからはかけ離れた出来の、まずいお菓子セットが渡されるというわけだ。

なぜそんなことが起きてしまうのか。それは工場労働者の給料が極端に安いからだ。北朝鮮の労働者が受け取る月給はせいぜい5000北朝鮮ウォン(約70円)。コメ1キロ分にしかならず、これだけではとても生きていけない。そこで、工場全体がグルになって横流しに励み、食い扶持を確保するのだ。

このような横流しは、食品工場に限ったことではなく、北朝鮮全体に蔓延している。これと同じ理由から、北朝鮮ではワイロ抜きには何もできないようになっている。行政や軍の幹部たちが、給料の少なさを補うため、自分の持つ権限を最大限に振りかざし、ワイロを要求するためだ。そのワイロはときに、女性に対する性的虐待の形を取ることもある。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

本来、子どもたちにお菓子セットを配るのは、金日成・金正日・金正恩の3代の指導者がいかに偉大で、ありがたい存在かを子どもや親に宣伝するためだ。