金正恩氏の妹・金与正氏が訪韓へ…金ファミリーで初

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北朝鮮は7日、韓国政府に対し、平昌冬季五輪(9日開幕)に際し韓国を訪問する高位代表団の団員に、金正恩党委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会第1副部長が含まれると通知した。韓国統一省が明らかにした。

故金日成主席に始まる金氏一族の一員が韓国を訪問するのは、これが初めてだ。その政治的な意味は韓国にとっても北朝鮮にとっても重いものがあり、金正恩氏は韓国攻略の「勝負」を賭けてきているのかも知れない。

同代表団の団長は、憲法上の国家元首である金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が務める。

同代表団にはほかに、国家体育指導委員会の崔輝(チェ・フィ)委員長と、祖国平和統一委員会の李善権(リ・ソンゴン)委員長が団員として含まれる。

金与正氏は、2016年5月の党中央委員会第7期第1回総会(全体会議)で党中央委員となり、昨年10月の同第2回総会では政治局委員候補に選任された。金与正氏はまだ30代初めの若さだ。さすがにロイヤルファミリーの一員でもあり、かなりのスピード出世だ。

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さらに昨年12月21日、朝鮮労働党の末端組織の幹部を集めた「第5回党細胞委員長大会」では、最高幹部らと並び壇上の最前列に席を占めた。過去のこうした催しでは、金与正氏が裏方として動いたり、客席に座ったりしている姿は見られたが、壇上に座っているのが確認されたのはこれが初めてである。

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金与正氏はこのとき、金正恩氏の左5人目の席に座っているが、2人の間にいるのは崔龍海(チェ・リョンヘ)、金平海(キム・ピョンヘ)、呉秀容(オ・スヨン)、朴泰成(パク・テソン)の各党副委員長である。まさに北朝鮮の最高幹部たちであり、正恩氏の妹に対する期待の大きさを物語っている。

今回、明らかにされた「党中央委員会第1副部長」の肩書は、日本で言うなら中央省庁の次官クラスである。しかも、金与正氏が席を置いていると見られる宣伝扇動部は、組織指導部に次いで党内ナンバー2の重要部署だ。

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気になるのは、与正氏が今後、どのような役割を担っていくかだ。一説に与正氏は、正恩氏の「動線」を点検する任務を与えられているとされる。やはり、米国との軍事的緊張下で正恩氏の動きを取り仕切る事ができるのは、信頼できる身内しかいないのかも知れない。

だが、与正氏が今後、党中枢で権力の階段を登って行くのならば、果たすべき役割はこの程度のものでは済まない。

脱北者で平壌中枢の人事情報に精通する李潤傑(イ・ユンゴル)北朝鮮戦略情報センター代表によれば、金正日総書記の死後、北朝鮮の政務と人事を一手に握る党組織指導部長は、金正日氏の妹である金慶喜(キム・ギョンヒ)氏、次女であり正恩氏の異母姉である金雪松(キム・ソルソン)氏が歴任してきたという。

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ならば与正氏も、これから時間をかけて経験を積み、叔母や姉に匹敵する重要ポストを任される可能性もあると考えられる。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記