金正恩氏「火気厳禁」「学校教室」でもタバコ吸い放題の非常識

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北朝鮮の金正恩党委員長が、火気厳禁と見られる工場で平気でタバコをくゆらせる写真がまたもや公開された。もともとヘビースモーカーとして知られている金正恩氏は、何度か禁煙にチャレンジしていると伝えられているが、まったく成功していないようだ。

トイレにストレス

北朝鮮の国営メディア・朝鮮中央通信は1日、金正恩氏が平壌トロリーバス工場を現地指導する様子を報じた。金正恩氏は「全ての建築物がこざっぱりしてすばらしい」などと評価しながら、工場内を見学した。

ところが、同通信が配信した写真を見たところ、明らかに工場内の製造工程のそばで火の付いたタバコを指にはさんでいる。

常識的に考えれば、工場内でタバコに火をつけるのはNGだろう。金正恩氏は、過去には学校現場でも平気でタバコを指にはさむこともあり「常習犯」とも言えるが、いくら最高指導者とはいえあまりにも非常識だ。マナーも何もあったものではない。

そんな金正恩氏も禁煙にチャレンジしていたふしが見られる。昨年5月30日、朝鮮中央通信は金正恩氏が弾道ミサイルの発射実験を指導したと報じた。この時に配信された金正恩氏の写真を詳細に見たところ、どうも胸には禁煙補助用のパッチを貼っているように見える。

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朝鮮中央通信は同日の記事で、「禁煙活動が活発化している朝鮮で最近、効能の高い禁煙製品であるニコチン絆創膏が新しく開発された」と報じた。ニコチン絆創膏とはニコチンパッチのことだろう。さらに、写真が公開された日は、世界禁煙デー(5月31日)の前日だった。

禁煙の風潮が世界的に広まるなか、金正恩氏もイマドキの指導者としてタバコをやめようとしていたのかもしれない。しかし、今回の写真を見るに金正恩氏が禁煙するのは相当難しいと見られる。

なかなか禁煙できない理由として考えられるのが、ストレスだ。現地指導などの公開活動では、多くの人と接する機会も多く、様々なストレスが生じるからだ。そうでなくても、金正恩氏の性格は極めてプライドが高く短気と言われており、その性格が露呈したこともある。

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2015年5月、金正恩氏はスッポン工場を現地指導した。この時、工場の管理不十分にブチ切れて責任者を処刑し、その際の動画まで公開した。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

その前月には当時の人民武力部長だった玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)氏が人間をミンチと化す残忍な方法で処刑されたばかりだったこともあり、金正恩氏の残虐性に北朝鮮国内、そして世界が衝撃を受けた。

北朝鮮政治のなかで、指導者としての威厳を保たねばならず、場合によっては粛清・処刑まで決定する立場にある金正恩氏はありとあらゆるストレスに苛まれているだろう。

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また、金正恩氏が公開活動をする際には厳重な警護体制が敷かれ、行動が大きな制約を受ける。ちなみに、一般のトイレを使用できない金正恩氏は、専用車のベンツに「代用品」を載せて移動しているというが、これすらもストレスの大きな原因となる。

金正恩氏が精神的に安定するためにもタバコは不可欠なのかもしれない。しかし所構わず火の付いたタバコを指に挟む金正恩氏に対して、周囲はどのように思っているのだろうか。

もっとも側近たちからすれば、金正恩氏が下手に禁煙をしてストレスを溜めてブチ切れるより、例え非常識であってもタバコを吸って上機嫌ならその方がマシだと言えるかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記