ハメを外し過ぎると「収容所送り」も…北朝鮮も忘年会シーズン

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朝鮮半島では昔から、女性の飲酒は好ましからざる行為と捉えられていた。

一例を挙げると、1927年4月1日の東亜日報は、平安南道(ピョンアンナムド)の順川(スンチョン)の商工業を紹介する記事で「飲酒できない者」として少年、老人、女性を挙げている。

この時代には「女性は酒を飲んではいけない」という見方があったことの証左と言えるが、朝鮮王朝時代には女性の飲酒をタブーとする考え方は薄かったはずで、後に西洋のキリスト教的価値観の影響を受けて変わったのだろうと見る向きもある。

いずれにしても、女性の飲酒はタブー視されていたわけだが、それが先になくなったのは韓国だ。

韓国統計庁と保健福祉省の調査によると、女性の飲酒率は1992年の33.0%から1999年には47.6%、2015年には70.8%に達した。また、男性より女性の方が、爆弾酒など危ない飲み方をする人が多いことも明らかになっている。

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一方、北朝鮮の酒の場に女性が現れたのは、1990年代以降の話だ。

平壌のデイリーNK内部情報筋によると、市場で商売を行なうようになった女性たちは、一家の財布の紐を握るようになり、家庭でも社会でも地位が上昇した。女性商人同士の集まりでは、酒を飲むのは当たり前になっている。

しかし、「女性の飲酒は好ましくない」という見方が消えたわけではなく、依然として白い目で見る人々もいる。

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儒教的な考え方の色濃く残る社会主義体制下で生まれ育った老人たちの目には、女性の飲酒を含め、新しい文化そのものが資本主義的で不純なものと映るようだ。

老人は男女を問わず、若者が酒を飲んで踊っているのを見ると、非難したがるという。特に舅、姑が同居している家庭ではトラブルに発展しやすいようだ。ある家庭では最近、妻が酒を飲んで深夜に帰宅したことをめぐり、家族の間で大喧嘩となった。

一方の若者は、酒も飲まずにおとなしくしていると仲間はずれにされるとの心理が働き、好きでもない酒を飲んでしまう例が多いという。

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さらには、大人たちが酒を飲むのを見て、子どもたちもジュースで乾杯するようになったという。

大人も子どもも、コップを持って乾杯するが、2000年代まで使われていた「チュクペ!」(祝杯)という掛け声に変わり、今では「コンベ!」(乾杯)と言うようになった。ほとんどの北朝鮮の人は、これを韓流ドラマの影響と見ているとのことだ。韓流ドラマを見たことが当局にバレたらたいへんなことになるが、それでも人々は見るのを止めようとしない。

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11月と12月は職場などでの年間決算総和(総括)が多く、打ち上げや忘年会が頻繁に開かれるが、かつては首領への忠誠を述べた上で乾杯することが多かった。それが最近では、カネ儲けと健康を願って乾杯することが増えた。

子どもたちの集まりでもかつては「立派な科学者、軍人になって指導者に忠誠を尽くすことを誓って」乾杯していたのが、今では「金持ち、社長になることを願って」へと変わってしまったという。

他の国と同様に北朝鮮でも、酒にまつわるトラブルが後を絶たない。

典型的なのが「舌禍」だ。酒の勢いで体制批判をしてしまい、酔いが冷めた時にはトラ箱ならぬ収容所、という具合だ。

また、海外にいる北朝鮮の外交官や労働者が、滞在国の法に違反して酒を密造したり密輸したりして、摘発される事件も続発している。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

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