金正恩氏が来年「血の雨」か…姉の「公式デビュー」説も

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デイリーNK編集部の取材によれば、韓国の情報機関・国家情報院(国情院)傘下の国家安保戦略研究院は18日に行った記者懇談会で、北朝鮮高官の黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍政治総局長と金元弘(キム・ウォノン)同第1副局長に対する処罰は「(粛清の)終わりではなく始まり」であるとの見解を示した。

国情院は11月20日の国会情報委員会で、朝鮮労働党組織指導部が軍総政治局の「不純な態度」を問題視して検閲を実施。その過程で、黄炳瑞氏と金元弘氏をはじめ、相当数の幹部が処罰されたもようだと報告していた。

同研究院のイ・ギドン北朝鮮体制研究室長は黄炳瑞氏に対する処罰の内容について、「(本来の地位である)人民軍次帥よりかなり下の階級に降格され、ある部署に勤めていると承知しているが、出党(党からの追放)措置は取られていないものと把握している」とし、復権の可能性もあるとの見解を示した。

北朝鮮では、高位幹部が「革命化(再教育)」などの処分を受けるのはよくあることで、一時的に過酷な体験をするとしても、場合によっては復帰も可能だ。実際、一時的に消息の途絶えていた金正恩氏の側近が、ガリガリに痩せた姿ながら、公式メディアに再登場した例もある。

(参考記事:側近「激ヤセ写真」に見る金正恩式「再教育」の恐怖

一方、金元弘氏については、「不正が問題になり国家保衛相(秘密警察トップ)を解任されたのに続き、さらに新たな不正が発覚し、現在は農場員として働いているもようだ」として、復権は難しいとの予想を示した。

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いずれにせよ、今のところは流血を伴う粛清は行われていないようだ。ただ、来年もこのままいくかはわからない。

北朝鮮は過去、経済悪化による住民の不満をかわすため、経済官僚を処罰した例がある。1990年代の食糧難に際しては、農業担当の党書記が処刑された。2009年にデノミネーション(貨幣改革)が失敗に終わったときにも、党財政計画部長が責任を問われ公開処刑された。

(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

イ室長は朴奉珠(パク・ボンジュ)首相や党で経済を担当する安正秀(アン・ジョンス)副委員長らの名を挙げながら「対北制裁の影響で経済状況が大きく悪化した場合、責任転嫁の意味で経済部門のエリートが犠牲になる可能性がある」と指摘した。状況次第で、金正恩党委員長がまたもや「血の雨」を降らすことになりかねないとの見立てである。

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イ室長はまた、私見であるとしながら、金正恩氏の異母姉・金雪松(キム・ソルソン)氏が「政策・戦略的な役割を果たす可能性がある」とし、2019年に開催される最高人民会議14期代議員選挙で公式デビューする可能性があるとの分析を披露した。

金雪松(キム・ソルソン)氏は父である金正日総書記の秘書役を務め、党中枢でキャリアを積んできたとされる。ただ、これまで一度も北朝鮮メディアに登場したことがなく、デイリーNKジャパンが先日、世界で初めて画像を公開した。

(参考記事:金正恩氏の「美貌の姉」の素顔…画像を世界初公開

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記