韓国紙・朝鮮日報は16日、今年発生した韓国の仮想通貨取引所に対する4件の不正アクセス攻撃が、「北朝鮮の仕業であると確認された」と報じた。一連の攻撃では3万6000人分の情報が流出し、多額の仮想通貨が盗み取られた。盗まれた仮想通貨は、当時76億ウォン(現在のレートで約7億8200万円)規模だったが、現在の価値では900億ウォン(約92億5000万円)に達しているという。
同紙によれば、韓国の情報機関・国家情報院(国情院)は不正アクセスに使用された悪性コードを分析。この悪性コードが、かつてハッキング集団「ラザルス」 が米国ソニー・ピクチャーズやバングラデシュ中央銀行を攻撃した際に用いられたものと同じ方式で作られていることを確認したという。
また、悪性コードを送り込む方法も北朝鮮に特徴的なものだ。韓国紙・中央日報によれば、悪性コードは求人への応募を装ったメールで取引所に送られたが、添付された履歴書には、担当者の関心を引くために美貌の女性の写真が貼られていたという。北朝鮮は以前にも、これと同様のサイバー攻撃を韓国の要人たちに仕掛けている。
ちなみに北朝鮮では、サービス業などで美女の魅力をアピールしているようなものが少なくない。
代表的なところでは、中国をはじめ世界各地に展開している北朝鮮レストラン(北レス)がある。現在は経済制裁のあおりを受けて衰退の一途をたどっているもようだが、かつて東南アジアで働いていたある美人ウェイトレスは、ネットでアイドル並みの人気を誇っていたこともある。
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それ以外にも、高麗ホテル内のコーヒーショップの美女バリスタや、20代の美女が車を丁寧に手洗いしてくれる美女洗車場など、美女ビジネスが隆盛を極めている。
ビジネスで美女を前面に立てる手法はひとつのマーケティングの形だが、マーケティングとは心理戦でもある。国営メディアを通じ、訳のわからないことばかり言っているように見える北朝鮮だが、実はけっこう心理戦に長けているところもあるのだ。
ともあれ、北朝鮮によるこの手のサイバー攻撃は、今後いっそう活発化する可能性が高い。サイバー攻撃は相手国からの兵器使用による反撃につながりにくいという特徴があるように思われるが、北朝鮮が核武装していれば、さらにそのリスクは小さくなる。つまり、北朝鮮の「やりたい放題」になる可能性があるわけだ。また、北朝鮮のようにITインフラが未整備な国は、相対的に、サイバー攻撃を受けた時の耐性が強い。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面北朝鮮は現在でも、韓国に対して頻繁にサイバー攻撃を行っている。その対象が、日本にまで拡大しないという保証はないのだ。
高英起(コウ・ヨンギ)
1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 、 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 、 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。