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1945年以後、ドイツでは敗戦と社会改革によって、ナチスとは何の関係もない政権が出現したため、ナチス独裁は瞬間的な’軌道離脱’と考えられた。そのため、ナチスに対する批判はいくらでも可能だ。日本やロシアの場合、現政権が犯罪と虐殺をした過去の政権と一定の関係があるため、このような批判をしにくい。中国の場合は、現政権が1950-60年代に数千万人の良民を虐殺した政権の直接の後継者だから、批判はほとんど不可能だ。

旧共産圏で過去の清算を最もよくやった国はハンガリーとポーランド、東ドイツと言える。だがこれらの国々には、3種類の重要な共通点がある。

第1に、これらの国で過去の共産体制は、ソ連軍によって賦課された’強制輸入品’であると考えられている。すなわち、共産政権をソ連の衛星政権として見ることができ、その政権の犯罪は外部勢力によるものであると説明することができる。したがって、こうした犯罪に対する率直な認定は、民族のアイデンティティと自負心を破壊するものではない。

第2に、これらの国では、共産主義独裁が比較的厳しくなく、テロの規模も大きくなかった。また、共産政権に積極的に抗争することはできなかったが、政権に対する協力を避ける方法があった。ポーランドやハンガリーなどの国では、賦役者があまり多くなく、彼らに対する調査と処罰が可能だった。

第3に、これらの国では共産独裁の末期に、民主化勢力が形成され、共産政権の崩壊後、この勢力の出身者たちがエリート層に取って代わった。そのため、これらの国家の政治や文化、教育分野の指導階層には、共産党幹部の出身者があまり多くない。

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金父子のテロ、詳細な調査が必須

それでは北朝鮮はどうなのか?

残念だが、北朝鮮はそうではない。筆者が何度も主張してきたように、今後、北朝鮮の変化と関わるどのようなシナリオでも、幹部階層出身者が特権を維持することはほとんど不可避であると思われる。北朝鮮が中国の衛星国家や他の形態の軍事独裁になる場合、執権階層がそのまま残っていることは自然なことだが、体制崩壊と民主化によって招来された吸収統一の場合にも、知識と経験をほとんど独占した幹部階級出身は、社会進出が容易になるだろう。

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したがって、幹部たちは自分の既得権を保護するためにも、金父子の犯罪に対する調査を拒否するしかない。大多数の幹部は、もともとこのような犯罪行為と関係があった。また、まれにこうした関係が全くない幹部の場合にも、金父子の犯罪に対する率直な認定は、彼らの基盤を破壊する可能性がある。

ある側面から、韓国出身の政治家たちまで、こうした真実を隠そうと努力するだろう。金父子政権は世界の歴史において、前例がほとんどない残酷な独裁であるだけでなく、その集団は非常に長い間統治してきた。この世界で北朝鮮の住民ほど、スターリン主義統治の下で50年以上の間、暮らしてきた住民はいない。このため、金父子政権に協力した者はどうしても多い。北朝鮮で政治や社会、軍事、文化、教育、行政など、すべての部門で少しでも行動した人は、厳しく言って’親金派’とみなされる根拠がある。

保衛部の情報員(密偵)の問題はこれをよく見せてくれる事例だ。北朝鮮では人口あたり、少なくとも50人に対し、情報員が一人はいる。2千3百万の北朝鮮の人のうち、情報員は15万人に達するという意味だ。情報員として勤務してやめた者をあわせれば20-30万人と考えられる。保衛員たちや安全員(警察)を含めれば、国家テロと直接の関係がある人は40-50万人程度だ。

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これだけ多くの人を、詳しく客観的に調査することは難しい。体制崩壊以後、このような調査をするということが、社会にひどい混乱と流血の復讐の事態を引き起こすかも知れないから、政治家は危険な政策とみなして、大規模の調査を妨げる可能性もある。また、ナチス独裁以後のドイツやフランスのように、悪名高い極少数の保衛員と高級幹部に、すべての責任をとらせることは、社会の安全のために必要な措置であるとも思えるだろう。

北朝鮮でこうなっても、例外的なことではない。ドイツや中国、ロシアや日本で見られる接近とそっくりだ。また、韓国のアイデンティティと安全性を保障するために、この苦しい過去を忘れるのがもっとよいという意見が説得力を持つ可能性がある。

それでも筆者は、金父子の行為に対する調査と研究が本当に必要だと考えている。率直な調査をしなかったら、このような秘密は統一韓国の未来を苦しめるだろう。

もちろん、調査も責任ある者に必ず罰を与えることを意味するわけではない。北朝鮮では虐殺の規模があまりにも大きいため、客観的な調査はほとんど不可能で、統一社会での調和と平和を保障するために、昔の犯罪に対する一般の赦免が必要だということだ。

だが、政治勢力が歴史の証拠の一部だけ選択して流布することで、政争の手段に利用されることがないようにするためには、すべての北朝鮮の幹部に、一般の赦免を与えるのと同時に、北朝鮮の資料をありのまま公開することはよい措置であると考える。しかし一方では、こうした措置に様々な理由から反対する勢力が出るのは確実だと思われる。